YAMAMIX CLIMAX 2007 北岳・間ノ岳・農鳥岳

2007年7月30日(月)〜8月1日(水)  費用発生:39,500円

20007年の夏山シーズンがやってきた。どこかへ出かけようとあれこれ思案する。百名山踏破という縛りがなくなって初めての夏休みなので計画を立てるのもまた面白い。2005年の夏以来、南アルプスに行っていないので、ことしは南アルプスにしようと考えて、安直だが白峰三山縦走をやろうと思い立った。さて、2007年7月29日、会社がはねて19時35分の「スーパーあずさ」に乗って甲府へ。列車は中央本線を疾走するはずが、相模湖で大雨のため大月のあたりが運転見合わせということで抑止された。いらいらしながら一時間半ほど待って運転再開。大気の状態が不安定になっており山梨県内でもところどころ大雨が降っているらしい。

当初計画では20時半甲府着のはずが、2時間遅れての甲府到着。憮然とした表情で駅前のビジネスホテルにチェックイン。自民党の大敗を報じる選挙速報を見た後、就寝。三時間ほどしか寝れず、翌朝は三時半に起きて旅装を整え、甲府4時発の広河原行バスに乗る。昔の自分なら夜行列車で行って甲府で待つという手を使ったと思うのだが、もう33歳なので自重して前夜ホテル泊という手を使った。バスの中でも眠りこけ、6時過ぎに広河原バス停に到着。

7/30:行動時間2時間50分 400甲府=611広河原630ー650分岐ー900大樺沢二股ー920白根御池小屋(泊)

6時半頃歩き始める。空模様はあまり良くなく、今にも雨が降り出しそうな曇り空。野呂川の吊橋をわたって、広河原山荘の横から登山道に入り、7年前と同じように大樺沢コースを取る。支流の沢をいくつか渡り、見覚えのある、崩壊地を右岸の迂回路で越える道に入ったとたんゴロゴロという音がしだして雨が降り出した。傘を差しながら高度は上がるが、樹林帯の中はとても暗い状態。雷鳴に怯えながら登ってゆくのはあまり気持ちのいい状態ではない。ほどなく迂回路を抜けて雪渓の末端に出た。降りしきる雨の中、雪の上を歩いて高度を上げてゆくも雨脚はひどくなる一方。どうにかバイオトイレの発電機の音が聞こえだし、大樺沢二股までたどりついた。が、ここで白根御池小屋への逃げ込みを判断した。この状況でこれ以上の行動は危険と考えた。

樹林帯の中の道をゆく。一瞬目の前がフラッシュをたかれたように白くなったと感じたら次の瞬間ドガシャーンというけっこうな迫力の雷鳴が。森の中のトラバース道を20分も歩くと、前方が開けて、にごった水をたたえた白根御池に出て、次いで白根御池小屋の建物が見えた。小屋に逃げ込み宿泊手続き。朝九時半に一日の行動がすべて終わってしまうというのはふだんの生活から考えると仰天である。することもないので小屋の中、ふて寝を決め込む。

白根御池小屋は2006年に新築なっただけあって快適ですばらしい小屋。建物の造りもしっかりしており、布団も新しい。トイレも水洗で清潔。設備面では国内トップクラスである。昼過ぎに起き出し、食堂でインスタントコーヒー(300円)を飲み、山の本を読みながら、のんびりと午後のひと時を過ごす。高度2200メートルの白根御池小屋、これもひとつの夏休みであろう。ようやく無為に過ごしたデイタイムが過ぎ、午後五時から夕食。メニューはごはん、わかめと麩の澄まし汁、おいしくないチキンステーキ、おいしくないポテトサラダとキャベツの千切り、カップゼリーであった。することもないので早々に就寝。

7/31:行動時間8時間33分 522白根御池小屋−542大樺沢二股548−748八本歯ノコルー840吊尾根分岐−900北岳905−1000北岳山荘1030−1105中白峰ー1220間ノ岳1245ー1355農鳥小屋(泊)

翌朝五時から朝食を終え、出発。昨日とは打って変わっていいお天気である。昨日おののきながら来た道を戻って20分ほどで二股へ戻った。ここから北岳へ向かうコースは右俣コースと大樺沢コースの二つがある。しばし思案したが、コースタイムが短いのと7年前に登っていてある程度覚えているという理由から、私は大樺沢コースで行こうと判断した。基本的には雪渓を通らず左岸をよく見れば登山道があるのだが、2400m付近では雪渓を通らざるを得ないところもあって緊張した。キックステップで足場をつくる。

左岸のコースサインを追いながらの苦しいのぼりを行く。バットレス方面の沢を越えるときに沢水でタオルを濡らして首に巻く。なおも登り詰めていって、谷が狭まり、八本歯ノコルへ取り付く。木のハシゴ階段をいくつも上がってゆく。振り返れば北岳バットレスが雄大。眼下の大樺沢、白根御池方面の眺めも良い。何とか登り切って八本歯ノコルに到着。ここからは風も少し出てきたので緊張した。斜面を登ってゆき、北岳山荘トラバース道を分けて眼前の稜線めがけ懸命にのぼってゆくと標高3100mの吊尾根分岐にたどり着いた。菓子パン2個の行動食を済ませ、ここにザックを置いて北岳へ登る。たかだか20分の登りなのだが長く感じた。

頂上直下の険しい道を耐えて、午前九時に北岳頂上にたどり着いた。展望はさすがとしかいいようがない。白い頂上が異彩を放つ甲斐駒、均整の取れた山容が胸を打つ仙丈、オベリスクが立つ鳳凰、凛々しき南アルプスの巨人たち。振り返れば間ノ岳がこれまた大きい。これが見たくてここまでやってきたのだ。あまり時間もないので頂上滞在を5分で切り上げ、間ノ岳方面へ来た道を戻る。吊尾根分岐まで気の抜けない道を下ってザックを回収し、そのあとは展望を楽しみながら北岳山荘へ下る。稜線上のコブを巻いたりしながら徐々に高度を下げて、北岳山荘には10時過ぎに到着。ここでポカリスエットとカロリーメイト(600円)の行動食。3000m級の稜線、陽だまりの山荘で休憩するのもまたよい。

疲れてはいるが、あまりのんびりしてもいられないので10時半、重い腰を上げて間ノ岳へ向かう。まずは眼前の中白峰3051mへ緩い登りが続く。MP3の音楽を聴きながら登り切って、中白峰の頂上を通過。ここから間の岳魔だが長いのである。いくつもの稜線上の小突起を巻きながら高度をじりっじりっとあげて行く。大展望を満喫しながらゆっくりと登っていくと、雪田がちらほらと見えて、12時20分、間ノ岳に到着。塩見方面が良く見える。間ノ岳から伸びる稜線のはるか先が塩見岳へ続いている。菓子パン2つを食べながら展望を楽しむ。7年前はここで引き返したが、今回は農鳥岳もやるつもりでここまで来た。

そのあと今日の宿泊地、農鳥小屋めざして下る。一番左手の尾根にコースサインがある。急斜面をコースサインにしたがって下り、ほどなく道がなだらかになってゆく。眼下の農鳥小屋がだんだん大きくなってくる。そして眼前には農鳥岳が威容を見せてくる。奈良田へ下りたくばこの俺を越えて見せろといわんばかりに立ちはだかってくる。三国平らからの道を合わせ、14時少し前に農鳥小屋に到着。眼前の農鳥岳、背後の間ノ岳。この位置では農鳥のほうが隆々とした威容があり、間ノ岳はズンベラボウ過ぎてあまり美しくない。

農鳥小屋は一昔前の山小屋という雰囲気で、8つほどある小さな小屋が映画のセットのようであった。夕食はごはん、味噌汁(野菜やキノコがたっぷり入っていてうまかった)、山菜と豆腐の煮たのという質素なメニューだったがこれぞ山小屋の食事という感じがした。疲労か高山病か、頭が痛い。ぐったりした顔でごはんを食べていると小屋の主人が(名物主人らしい)「具合が悪いのか」と声をかけてきた。頭痛があると答えると「薬は飲んだのか」と聞かれ、「2時ごろに飲んだがまだ効かない」と答えると、「それは安い薬だからだ」と言われ、頭痛薬を分けてもらった。口調はブッキラ棒だが根はいい人だ。

農鳥小屋のトイレはほんとうに一昔前の山小屋で、別棟のボロイ小屋(男女別になっている分まだましか)、床板の上に穴があいているだけのちょっと怖いトイレで、昨日の白根御池とは雲泥の差であった。しかも紙が備えつけられていない。持参のティッシュで対応する。小屋は古く狭く、北アルプスの小屋のような快適さは望むべくもない。7時頃寝る。隙間風が吹き込んでとても寒かったが、毛布5枚にくるまってなんとか眠れた。朝五時からの朝食は、ごはんと具の多い味噌汁、生卵。そして5時半からいよいよ農鳥岳へ挑む。

8/1行動時間6時間48分:532農鳥小屋ー617西農鳥岳ー655農鳥岳705ー735大門沢下降点ー920大門沢小屋925ー1105取水施設ー1150奈良田第一発電所ー1220奈良田1350=1515身延1554・・・甲府1727・・・八王子1830

そこそこの斜面の登りをこらえながら進む。風がやや強く、ジャンバーを羽織りながらの登高。ふりかえると間ノ岳が大きい。45分ほど高度を上げていって西農鳥岳を通過。ここからがきつい岩稜帯の歩き。風が強いので難儀した。大井川の谷からふきつけてくる。道は稜線の西側を絡みながら登り降りを繰り返すしんどい道である。こんなんじゃあとても鋸岳や笊ヶ岳なんぞ行けないなあと思いながら苦しい尾根歩きをしのいで、最後の登りをこらえて、午前7時、白峰三山最後のピーク。農鳥岳に到着。展望のすばらしさは言うことなし。朝方なので遠望もすばらしく遠く槍穂高のあたりまで見えた。南側は白根南嶺、塩見岳、悪沢岳、赤石方面が圧巻。東側は富士山がひとり孤高の美しさ。その近くにはいくつもの低山が連なる。櫛形山はどれだろう、七面山はどれだろうかと探すのもまた楽しい。そして北側は間ノ岳、北岳と昨日越えた山々が。神秘の世界、南アルプスを歩けて大満足である。

名残惜しいが農鳥の頂上をあとにし、大門沢下降点へ下る。スイスイと大斜面を下って、ほどなく広河内岳との鞍部にある大門沢下降点におりついた。写真で何度も見た黄色い道標の下降点。その脇には冬山で亡くなった方の遭難碑と鐘がある。ここからは奈良田へ長い長い下りだが、もう登り返しはほとんどないので、本気を出して急下降をがつがつ下った。ハイマツ帯をがつがつと下って低木帯。稜線を外れて風がなくなったので暑さを感じたが、程なく樹林帯に入ったのでここちよい森の気につつまれたので安堵。急な下りを続け、左手に沢の流れを見ながら進み、なお下ると標高2000を切って、右手の沢を渡り、そのあと高まき状の道となる。9時過ぎに支流の沢を鉄パイプでできた橋で渡るとまた下り。9時20分頃、眼下に屋根が見え出し、大門沢小屋に到着。下降点から1時間45分で下った。だが奈良田まではまだまだ長い。とりあえずポカリスエット(300円)を飲んでひといき。

いったん沢を渡って左岸の道をゆくが、すぐに右岸へ戻って高まきが続く。ほどなく沢から離れてわずかの登り返し。そのあと小さな尾根を乗り越えて進むとなだらかな斜面。ほいほいと進んでいるといきなり急峻なジグザグ下りでいっきに川の近くまで高度を下げる。大門沢小屋から1時間が過ぎ、長い下り道に疲れたので、大コモリ沢を越えるあたりで菓子パン3つの行動食。そのあと行動を再開。11時過ぎ、高まき道が続き短い登りをへて取水施設そばの吊橋。こわごわ渡る。発電所取水口施設を過ぎると道の様相が若干よくなった。ひとしきり下って右岸へ2度目の吊橋で渡り返し、少し進むと砂防ダム工事現場に出た。工事現場を迂回しつつ進み、林道に出た。時たまダンプの行き交う林道を下り、新シブノ沢わきの「登山者休憩所(ダム工事をしている建設会社がこしらえたらしい)」で顔を洗い、なお進むと奈良田第一発電所に出た。ここからはバス道路を30分ばかり歩く。広河内橋、そして奈良田橋を渡り、丸山林道入り口をすぎてついに奈良田の集落にゴール。なんとか白峰三山を縦走した。

奈良田の里温泉では存分にくつろいだ。温泉で3日間の疲れを長し、食堂でざるそば定食(1000円)。13時50分発身延行のバスで退散。早川の谷はどこまでも続くかのように長かった。

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