しまなみ海道徒歩紀行

2011年1月4日(日)  所要時間12時間48分 費用発生:40,500円

2050西新宿=605福山613・・・632尾道635−655尾道大橋入口−708尾道大橋南−738向島ローソン−804幸谷峠−824老人ホーム橘花園−854因島大橋南−1018因島デオデオー1049生口橋南ー1109岩城行フェリー乗り場−1200南小−1210生口南IC入口−1235瀬戸田PA−1302多々羅大橋西

1302多々羅大橋西ー1400大三島橋西−1412大三島橋東ー1430阿部酒店ー1448伯方SCパークー1522大島大橋南ー1602大島北IC入口ー1657吉海郵便局ー1734よしうみいきいき館ー1840来島第3大橋南−1852糸山公園−1923波止浜駅1930・・・・134今治(泊)

(出発まで)

本州と四国を島づたいに結ぶルートは3本ある。メインルートの児島・坂出ルートや明石海峡大橋を通るルートは、通っている道路は高速道路であり、歩行者や自転車は通行できない。しかし、一番西に位置する尾道・今治ルートだけは、観光資源としての活用をねらったのか、「しまなみ海道」の通称がつけられ、歩行者・自転車の通行も可能であり、その気になれば尾道から今治まで歩いて渡ることも可能である。

とはいえ、道路の距離延長だけで65km程度あり、観光でこのルートを通る人はほとんどがサイクリングというのが実態で、本州から四国までを歩いて渡ろうと考える人はごく少数というのが実態である。自動車も原付も自転車も橋を通行する以上通行料を徴収されるが、歩行者はタダである。私は歩きの達人を自認しているが、それでも舗装路を60数キロ歩くのには抵抗があった。しかし、自分の足で歩いて本州から四国までを結べるのと、大小合わせて7本もの海を渡る橋を通過するというスケールの大きさに心惹かれ、2011年の正月休みにやろうと決断した。歩くべき距離は尾道駅から今治のとなりの波止浜駅までの約65km、2日あれば何とかなる距離だが、私は1日で歩ききれないか検討した。橋の前後には自転車で通行できるよう結構長いアプローチのスロープが設けられている。その部分をいくつかショートカットできれば、13時間程度で歩けそうだと判断した。

職場近くのブックファーストで、この区域の2万5000分の1地図を買い揃えた。行程全てを網羅するのに地図を6枚買わねばならなかった。私は携行できるよう、その6枚の地図を必要部分だけ切り貼りし、尾道から波止浜までの行程をA4大の紙にして6枚にまとめた。そして全コースの内容を頭に叩き込んだ。しまなみ海道を1日で歩ききることに価値がある。妙なこだわりだが、その思いを胸に1月3日の夜、西新宿のハイアットリージェンシー発20時50分の夜行高速バス「エトワールセト号」に乗り込んだ。バスは新宿駅西口でたくさんの客を乗せ、中央道に入った。このバスはほんらいは東名を通るのだが、きょうはUターンラッシュの混雑が予想されるので中央道を経由するとのアナウンスがあった。しばし揺籃に身を任せ、23時少し前に山梨県双葉のサービスエリアでトイレ休憩。そのあとバスは消灯される。私は夜行バスではそこそこ眠れる性質なので、そこから翌朝5時頃まで何も覚えていない。

(1.尾道から向島へ)

6時過ぎに福山駅に到着。夜行バスを降りて福山駅の在来線ホームへ向かい、6時13分発の山陽本線・糸崎行き列車に乗り込む。電車は夜明け前の闇の中を走り、6時32分、尾道着。ここから長い長い徒歩旅行をスタートさせる。改札を出てすぐのところfで、尾道水道をはさんで向島が見えており、駅前から渡し船が出ているが、自分の足で歩ききりたいのでいったん東に迂回し、尾道大橋を目指す。まだ夜は明けていない。海岸通りを黙々と歩き、尾道市役所の脇を通って国道2号線に合流する。このあたりで東の空が明けて来た。目の前に尾道大橋と新尾道大橋が見えてきた。

左折して山陽本線の下をくぐり、尾道大橋への登り坂をしのぐ。スロープの後半は階段でショートカットできた。そして高みに上がり、尾道水道にかかる最初の橋、尾道大橋を渡る。この橋は歩道が極端に狭く、しかも何箇所か吊橋のワイヤのある部分は人一人通るのがやっとのほどの狭さ。自転車での通行は厳しいかもしれない。事実しまなみ海道のサイクリングガイドも尾道水道の通過は渡し船を推奨している。とはいえ橋梁の長さは385メートルなので渡り終えるのに5分もかからない。料金所の横を通り、しばらくは西瀬戸自動車道と並走した後、向島の生活道路と合流する。ここで右折し向島の市街地に入ってゆく。思ったより向島は開けており、中規模のショッピングセンターなどもあった。田尻で左折し、向島を縦断するルートに入る。ゆるい登りをしのぎ、左手にローソンを見ると西瀬戸自動車道と交差し、ため池に出る。このまま幹線道路を歩いてもいいが、幸谷峠経由のショートカットルートをとることにして左折。坂をひとしきり登るともう幸谷峠、ここから下ってゆくと目の前に海と島が。いよいよ瀬戸内の島伝い。旅情を感じる。

坂道を下ったところが立花の集落。ここを右折し、妙見鼻をまわりこんだところが江ノ浦の集落。老人ホームの脇に、因島大橋へ通じるスロープがある。ぐねぐねしたゆるい登り道を10分ほど歩いて徐々に高度を上げ、とうとう因島大橋のたもとに到達した。いちおうショートカットするルートもあるようだ。さて、布刈瀬戸にかかる因島大橋は全長1270mと長く、しかも橋は2層になっていて、原付・自転車・歩行者は下段の檻のようなルートをとらされる。したがって建造物越しにしか景観を楽しめない。しかし1270mもの長さは堪能できた。渡りきるのに10分以上かかる橋などそうそうあるものではない。

(2.因島)

因島大橋を渡りきって長いスロープを下り、因島に降り立つ。つぎはこの島を南北に突っ切らなければならない。市街地を通るルートもあるが、私は高速道路に並走するルートを取った。沢崎の集落で右折し、徐々に丘を上がってゆくとほどなく高速と並走するようになり、因島北インターの脇に出る。ここを右折して高速の下をくぐり、ローソンのある次の信号交差点を左折、また高速のしたをくぐり、左手に運動公園の敷地を見て、もう一度高速の下をくぐるとほどなく島の南側に出る。突き当たりを左折。このへんは因島でも開けているところらしく、ホームセンターやパチンコ店なども街道ぞいにある。大浜町からのメインルートと合流し、少し進むと目の前に次の橋、生口橋が見えてきた。もっとも橋に取り付くにはいったん橋の下をくぐって少し進んだところを左折し、馬鹿丁寧に作られたスロープを上がっていって高台に至り、ようやく生口橋に合流。

(3.生口島)

この橋は長さ790m。渡りきるのに10分弱かかった。生口島に下りるスロープは後半ショートカットできた。3つ目の島、生口島もうんざりするくらい大きい。しまなみ海道で一番大きなウェイトを占めるのは6つあるそれぞれの島の縦断・横断である。まずは島の東岸につけられた車道を南下してゆく。ほどなく島の南岸に回りこみ、岩城島行きのフェリー乗り場を通過。疲れたので小さなスーパーに立ち寄り、菓子パンを購入。ほおばりながら歩みを続ける。海沿いの幹線道路歩きを淡々とこなす。正午ころ南小学校、シトラスパーク入口を通過し、生口南インター入口を通過。ここでうまく高台に上がる道を拾い、高速道路の瀬戸田パーキングエリアを目指す。最後パーキングに行く道が分からなかったので、いけないことなのだがパーキングエリアのフェンスを強引に乗り越えた。瀬戸田パーキングの一隅に高速バス停があり、そこから多々羅大橋方面へ歩道が伸びている。

(4.大三島)

ほどなくスロープと合流し、多々羅大橋を渡る。全長1480m。ただただ長い。きりきり歩いても渡りきるのに15分はかかる。この橋は車道の脇に歩道が設置されているので、瀬戸内の海と島の眺めを堪能しながら歩いた。この橋の中間点から、愛媛県に足を踏み入れる。6時間あまり歩いてようやく全行程の半分である。対岸の多々羅岬が近づき、スロープをうまくショートカットして、道の駅を見ながら国道をまたぎ、大三島に降り立つ。この島は東岸を一時間ばかり歩けばよい。大三島インターの入り口を過ぎて、小さな古城島を見ながら南下してゆく。いくつかの集落を通過し、左側に工場をいくつか見ると瀬戸の集落。そのまま直進し、港を過ぎるとサイクリングロードは右に曲がりつづら折り状に高度を上げてゆく。そして伯方島との海峡をカーブを繰り返して進むと目の前に大三島橋が見えてきた。

(5.伯方島)

橋の下をくぐってしばらく進むと大三島橋の入口。幅広い歩道で橋を渡る。この橋は長さ328mなので、伯方島まではすぐである。対岸のスロープを下り、5つ目の島、伯方島に降り立つ。このあたりで左足が張ってきた。越えるべき島はあと2つなのだが、先が思いやられる。高速道路沿いの小道を1キロほど進むと、伯方島の幹線道路に出る。高速をくぐり港伝いに歩いた。5階建ての団地などもあって意外と街並みめいたものを感じる。造船工場らしき建物の脇を通ると阿部酒店の前に出る。渇きを覚えたのでここの自販機でサイダーを買う。疲れてきたが前へ進むしかない。

伯方島インターを過ぎ、道の駅SCパークを3時少し前に通過。日没前に少しでも前進しておきたいのでトイレ休憩だけにしておく。そして伯方・大島大橋への入口。原付用のスロープは急勾配だが短く、歩行者・自転車用は勾配はゆるいが距離が長い。スロープを一歩一歩上がり、全長1230mの伯方・大島大橋を渡る。今しがた通った伯方港の眺めが良い。小さな見近島の上を通ったあと長い大島大橋。行動開始から9時間近くなり、さすがに疲れてきた。ようやっと最後の島、大島に上陸。降りるスロープは例によって原付用とそれ以外用に分かれており、いけないことなのだが距離の短い原付用スロープ経由で大島クリーンセンターへ降り立った。

(6.大島)

この島を突っ切れば最後の橋(来島海峡大橋)なのだが、11kmほどあるので長丁場になる。まずは宮窪港への海岸歩き。だんだん宮窪港が大きくなってきて、街並みに入り右折して幹線道路に入る。少しのぼり気味なので辛い。

ゆるい登り坂を歩いて、大島北インターを通過。そして公園の入り口を過ぎて低い峠を越える。かなりばてて来たので、路傍の自販機で熱いカフェオレを買い、菓子パンで行動食。そして南下をつづけ、吉海町に入る。スーパーやホームセンターなどもある開けたところだ。いよいよ日没が近くなる頃、空を黒雲が覆い、雨が落ちてきた。通り雨だろうと判断して歩き続けたら雨脚が強くなってきた。ザックの中から折り畳み傘を取り出し、傘をさしながら歩く。吉海の田園地帯を大きくカーブしながら進むと、ようやく大島南インター。あともう少しでこの島を横断できる。私は6枚目の地図、最後の一枚を取り出した。インターを過ぎてゆるい下りを前進してゆくと、わずかな残光にうかびあがる6本の橋脚。そしてピッカリピッカリと光る橋脚の灯り。しまなみ海道の盟主、来島海峡大橋がいよいよ目の前に。

橋の目の前に道の駅「よしうみいきいき館」があるが、日没後なので食堂や売店は営業していなかった。フェリー乗り場を過ぎていったん橋の下をくぐり、いよいよスロープにかかる。高さのある橋だけにスロープの長いこと。歩行者用のショートカットはあったが木々に覆われ進めなかった。やむを得ず自転車用のスロープを延々歩く。スロープを上がり幹線道路をまたぎ、岬に入ってなお続く。最後はループ状のスロープで橋に合流。いよいよ来島海峡大橋。

(7.来島海峡、今治)

ここまできたら痛いのかゆいのは言ってられない。全神経を前進させることに集中させる。雨は小降りになり、橋の上で風が出てきたので傘はしまう。この橋は総延長4キロ余に及ぶ世界初の三連吊橋であり、3つの橋で構成されている。まず来島海峡第一大橋960m。夜の海を巨大な橋で渡る。航路標識灯や岬の回転灯がまたたく。そんな中を歩くのだから疲れてはいるがもう胸躍る。10分以上かかって2本目の来島海峡第二大橋1515m。これもたいへん長い橋。橋脚から橋脚までが実にしんどい。ほどなく馬島の上に達し、料金所と馬島に通じるエレベータ入口を通過。そして最長の橋、来島海峡第三大橋1570m。実に長い。渡り始めてから渡り終えるまで小一時間かかるというのもすごい。

5本目の橋脚、6本目の橋脚を過ぎ、ようやく四国の陸、糸山岬が近くに見えてきた。高速道路と別れ、ループののスロープを1回転して、最後は階段を下って糸山公園にたどりついた。時刻は午後7時前であった。ここから予讃線の波止浜駅までは30分もしない。痛む足を引きずりながら南下。波止浜駅までの距離を示す道標があるので迷う心配はなかった。ガソリンスタンドを過ぎて右折し、幹線道路に出る。それを横断して少し進み、予讃線の線路に出た。波止浜駅まではすぐで、19時23分、ついに私はゴールの波止浜駅に到着した。所要時間12時間48分。しまなみ海道を徒歩で、一日で渡りきった。

タイミングよく19時30分発の伊予西条行き電車がきたので乗り込む。二両連結の電車に揺られる。今治までは一駅である。ズタズタの状態でたどり着くことが予測されたので、今夜の宿は今治駅前のビジネスホテルを押さえてある。うまそうな店を探す余裕などなく駅前の食堂でハマチ塩焼き定食の夕食。ホテルにたどりつき旅装を解くなり私はバッタリとベッドに沈んだ。

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