2002年12月20日(金) 所要時間6時間34分 費用発生:13,000円
2310京王八王子=529山科・・・京都・・・木津・・・加茂745=813原山−935童仙房−950童仙房小学校−1019野殿−1116押原1126−1213月ヶ瀬口−1253高山ダム−1340恋志谷神社−1426布目川発電所−1447笠置(郵便局)−1450笠置駅1517・・・亀山・・・名古屋1820・・・浜松・・・静岡・・・2230小田原・・・新百合ヶ丘・・・010多摩センター
半年ぶりに東海自然歩道へ復帰することとなった。まあ少ない休みを割いて夏山・秋山を存分に堪能したのであるから、もうひとつの大目標である東海自然歩道は年の瀬に押しやられた感がある。寒いので出歩くのは億劫なのだが、本業の仕事が日々容易でない事態となり、張り詰めた心の連続でいつか精神崩壊に至るのではないかと常々思っている。日々の厳しさと己が思っている社会科学論・外部環境論が奇妙にマッチしており、それが毎日をますますサバイバル戦場たらしめているのである。山にゲームに美食に遊び呆けている小生ではあるが、本質は小生は労働者なのであって、労働者は自分の労働しか売るものはない。
世界的経済環境が加速する中、労働者としての自分にとっての売り物は何か、生き残れるだけのスキルを持っているのかと疑心暗鬼に囚われ続けている。文章力があるとかカンが鋭いとか数字に強いとかアクセスのクエリが組めるとか絶対音感を持っていて歌がうまいとかビーフストロガノフが作れるぐらいの売り物ではお話にならないのが現代なのであって、その程度の装備ではナイフ1本でゾンビの群れと渡り合うようなものだと常々思っているのであって、遅かれ早かれ喉やら腹やらを食い破られて、目の前が真っ白になって断末魔の叫びなど上げて、屍をさらす日が来てしまうなと感じる今日この頃。それでもきょうを楽しむ事はやめられない。レクイエムで言う「破滅の日、怒りの日」がいつかは来るやも知れぬが、来たら来たで笑って胸を出してやろうではないかと感じている。だから私は旅に出る!
支離滅裂な前置きで恐縮だが、そんなわけで2年ぶりに青春18きっぷを購入してしまった。年末年始の大垣夜行は座れないのであるが、なんとかなるさと考えることにする。でも今回の行程は、「ムーンライトながら」を使ってしまうと加茂発のバスの接続が悪いので、プラスオン7950円を承知で、往路はあえて八王子23時10分発の高速バスを使った。バスは中央高速に入った後ほどなく消灯された。車内でうとうととまどろむ。
目が覚めたら多賀サービスエリアで時間調整の停車であった。ほどなくバスは動き出し、明け方の名神高速をひた走り、高速を降りてすぐ山科駅に到着した。ここで下車し、山科の駅で青春18きっぷに日付を入れてもらう。網干行きの快速で一駅、京都で奈良線に乗りかえる。小説を読みながら夜明け前の奈良線を行く。二両編成の車内はそこそこ混んでいた。奈良の一つ手前の木津で加茂行きの電車に乗り換え、一駅乗って加茂で下車。和束村小杉行きのバスの時刻までちょっと間があるので底冷えのするコンコースで甘いパンの朝食。
7時45分の小杉行きのバスで前回打ちきった原山を目指す。この路線は半年前はJRバスだったが、現在は奈良交通に移管されている。ほどなく車内は小中学生で満員になり、彼らが一斉に和束小学校で下車し、乗客は私一人になった。バスは山間に入っていき、ほどなく原山に到着した。前回打ちきった道標にタッチし、歩みを再開した。下り坂を降りたところで橋を渡り、門前の集落を横切りながら進むうちに、道はいつのまにか茶畑の間の林道となった。小一時間時折茶畑が現れる、ダート混じりの林道で高度を上げて行くしんどい道であった。いくつか林道同士の分岐があるが、道なりに進むか、紛らわしい所では道標が立っているので迷う事はなかった。
だいぶ高度を上げると、道は稜線に近くに達する感じとなり、ほどなく下りになって、ひょっこりと童仙房の集落に出た。ここからはアスファルトの南山城林道である。ないおん寺の門前を素通りし、小学校前の交叉点ですこし迷ったものの野殿へのみちをとり、ゆるいアップダウンを経ながら退屈な車道歩きを続け、また耕地が出てきたなと思ったらそこが野殿であった。ここで右折し、林道を押原へ向けて下る。ほどなく古道の分岐の表示を分けると、道はつづら折りの下りとなった。ヘアピンカーブの個所ではインを取るようにして下っていき、歩行距離短縮を心がけた事もあって、50分程度の下りでNTTドコモの鉄塔を過ぎ、ほどなく国道をはしる車の音が聞こえてきた。しかしそこからも大きい山腹をからむカーブがいくつかあり、国道脇のトラック運転手御用達の食堂の側に降りついたときはうんざりした。大型トレーラーが何台も駐車してある食堂は敬遠し、ここでコンビニ弁当の昼食。
ここから月ヶ瀬口までは国道を歩いた方が早いが、東海自然歩道に狂った者としては、ルートどうりに歩こうと考え、国道を横断して東海自然歩道を進んだ。小道を進み耕地のふちを辿り、犬の吠え声がやかましい飼育場の横を通り、関西本線の上をトンネルでまたぎ、そこからは茶畑ぞいの林道を曲がりくねりながら黙々と歩かされる、意外と時間のかかる道であった。押原から50分弱を要し、ようやく月ヶ瀬口駅そばにたどりついた。きょうは笠置まで歩く予定なので駅に背を向け伊賀川を渡り、南へ車道をひと登りした後、右折して高山ダムへ向かう。右折後1キロ弱歩くと、ダムサイトの公園のような所に出、グラウンドとテニスコートの間を進むと、眼前に大きな高山ダムの堤体が現れた。
堤体の上の道を進む。右側の眼下は目もくらむような谷底である。黒部ダムほどではないが、それなりに迫力がある眺めである。ダム横で一休みした後、MDウォークマンを耳に当て、木津川ぞいの林道を淡々と進む。左側は岩壁、右側に谷といった構図の道を時速6キロペースで進み、三十分後に発電所横、さらに十分後に恋志谷神社と順調に通過した。さらに林の中の薄くらい林道を進み、十一面観音のすこし先で林道と別れ、木津川土手沿いの小道となった。すこし進んでJR関西本線の鉄橋下をくぐり、車道に出て、駐車場の脇を左折して飛鳥路へ向かう。
踏切りを渡り、わずかの登りをしのぐと路傍に水車のある小さい集落に出たらそこが飛鳥路であった。あっさり集落を横切ると布目川に出て、甌穴群を瞥見しながら川沿いに下って行くとほどなく木津川との合流点に立つ発電所の前を通過。ここで再度、線路を横切りそのあとは笠置の手前まで線路沿いの歩きである。右に木津川、左に線路、落石防止トンネルの横を通ったりする面白い区間であるが、区間が長くないため関西本線のディーゼルカーには出会わなかった。
笠置の休憩所から街並みに入り、ほどなく駅への分岐点である笠置郵便局の前に出た。ここを打ち切りポイントとし、ポストにタッチしてからコースを離脱した。懐かしい雰囲気のある雑然とした駅前商店街を過ぎ、ほどなく笠置駅に到着した。駅前には南北朝時代の動乱を描いた像がある。15時17分発のディーゼルカーで戻りにかかる。普通列車乗り継ぎで今日中に東京へ戻らねばならない。一両だったので月ヶ瀬口まで座れず、そのあとすぐ泥のような眠りに落ちた。眠りながら終点の亀山で起こされ、名古屋行きに乗換えてまた爆睡、浜松行きの快速でも眠りこけ、ようやく静岡行きの電車内で激しい眠気が収まった。夜の駿河路を列車は走る。金谷・島田・焼津と、だんだん東京が近くなってくる。私はため息をつきながら登山靴の紐を解きにかかった。