社会生活において、移動の手段とはクルマであり、電車であります。そうしたなか、東京は高尾山から大阪の箕面まで自然に溢れた小道がまがりなりにも続いているのは、ある意味で貴重ではないかと思っています。東海自然歩道本コースを歩き終え、すこしの達成感と大きな虚無感、安堵感がこみあげています。
東京から大阪まで、新幹線を使えば三時間足らずですが、この東海自然歩道ツアーは距離が東海道の倍近いこともあって、歩くのに280時間を要しました。8年間にわたり、休日とお金をつぎ込んだ結果ですが、その道中はおもしろく、意外に手近な自然とふれあうことが出来たと思っています。
3000mクラスの日本アルプスは、出発前ある意味悲壮感を漂わせながら準備するのですが、東海自然歩道は基本的には誰にでも歩ける道ですので、徒歩の旅の楽しさを満喫できました。ただ、往復のアプローチや行程の区切りには、けっこう悩みない智恵を絞りました。しかしそれも強行突破や夜間歩行等で乗りきりましたし、往路・復路のアプローチを考えると言う点では、計画の楽しみは他の登山紀行を遥かに凌駕したと思っています。
ツアーから帰ってきて、旅行記は早ければ当日中、遅くても翌日までには書き上げるようにしました。小生は忘れやすい生き物であり、仕事上での打ち合わせの内容や決定事項もよく忘れるので、早め早めに文章に残しておくことを心がけました。
最後に、web上で数々のアドバイスを頂きました東海自然歩道膝栗毛・掲示板の皆様、susumuさんには本当に感謝しております。この方々のご教示がなければ、コースミスの回数は激増していたと思われます。また、仕事場のかたがた、Fさん、ミスターOさん、M永さんには、激励の言葉を多く頂き、感謝しております。
いい旅をどうもありがとうございました。
2001年11月 今野和弘
林 明彦
今野氏が登山の他に夢中になって行っているのが東海自然歩道のトレッキングである。第1部では東京を出発してから愛知県に突入するまでの行程が描かれている。彼は幼い頃よく高尾山に登っていて、そこで「東海自然歩道」の存在を知ってしまったのである。大阪まで一体どんな道が続いているのだろうと。今野氏のはてしない好奇心が東海自然歩道に駆りたてるのであろう。
本家の「風よ・空よ・山よ」がピークハント中心で、最も楽に登れる登山口からのピストン往復に終始しているが、東海自然歩道は計画を決めて、行って帰ってこなくてはならないという、ある意味百名山よりハードだと氏はよく私にもらすのである。時刻表と地図を開いてああでもないこうでもないと日夜検討しなくてはならず、その結果として思いつきの夜間歩行や飲酒登山という奇策にあらわれるのである。
百名山ツアー「風よ、空よ、山よ」がスポーツライクな登山ツアーの記録だとすれば、こちらの「空と水面の旅」はあの山の向こうに何があるか・・・というはてしない旅の物語であり、今野氏の探求心・好奇心が反映された記録になっているのであると思う。