1999年7月31日〜8月1日(土・日) 費用発生18,297円(食料費込み)
615高尾・・・805韮崎820=855白須車庫ー945竹宇駒ヶ岳神社ー1126粥餅石1150ー1206横手白須分岐ー1331刀利天狗ー1416五合目小屋1422ー1510七丈小屋(泊)550ー632八合目鳥居ー730甲斐駒ヶ岳744ー843駒津峰ー950仙水峠ー1024仙水小屋ー1105北沢峠1115=1140広河原1145=1300甲府1310・・・1410八王子
山紹介及び最も楽な登り方〜南アルプス北部の名峰。その素晴らしい白い山容は雄大にして荘厳。南アルプス天然水はこの山から採取される。最も楽なコースは北沢峠からだが、それでも4時間30分の登り。黒戸尾根コースはうんざりするほど長く緊張箇所もあるが、登りを2日かけると考えればメリットがあるかも。難易度は3プラス、黒戸尾根からなら4プラス。
5年ぶりの南アルプス挑戦である。鳳凰山から見た甲斐駒の秀麗な姿に魅了され,また私が愛飲する南アルプス天然水の山ということで思い入れがあった。本来の私なら最も楽な登り方の北沢峠から挑むのだが、今回は仕事方面でいろいろあって刹那的気分になっているためか、単に魔がさしたか、黒戸尾根から挑むという暴挙に出た。
さて、韮崎発8時20分の下教来石行きのバスは国道20号をゆっくりと走り、穴山橋から甲斐駒のふもとに入り、白須車庫というバス停で数人の登山者を降ろした。ここはまだ国道20号沿いである。まずは登山口の竹宇駒ヶ岳神社まで歩かねばならない。暑い。汗がどんどん絞られて行く。先が思いやられる。
白須中学の横を通り別荘を横目で見つつ樹林帯に道が入ると、神社まであと1キロの表示があらわれ、きっかり10分後に広い駐車場に着いた。勇敢な登山者か、尾白川渓谷キャンパーか。駒ヶ岳神社に参拝し境内の左奥から渓谷を吊橋でわたるといよいよ長い長い登山道のスタートである。まずは何の変哲もない山梨県らしい低い樹林帯のゆるい登りである。今回は先が長いのでゆっくりめのペースで歩く。ほどなく渓谷周遊道を分け、淡々とした登りを進める。こういうときには頭の中で色々考え事をするのがよい。仕事のこと、遊びのこと、その他。
考え事をしながら歩くうちに道は2つに分かれる。尾根へ向かう道は新しく出来た道のようではやく上に出られる道。トラバースする道は粥餅石水場経由の前からある道だが最近荒れ気味とのこと。暑くてたまらないので当然水場経由のルートを取る。案の定沢筋が大きく荒れていた。大きな2つの岩が粥餅石で、そのわきに小さな水場がある。体が熱いので非常にこの水はうまく感じた。ここで早めの昼食にする。
そこから15分ほど笹原の斜面の中を登り行くと横手・白須分岐を過ぎる。さらに斜面の中の、ごく普通の山道を登って行く。だらだらとした登りが延々つづく。登りが少しきつくなったなと思うとやせ尾根に飛び出し両側が切れ落ちた黒戸の刃渡りである。が、ここは鎖につかまっていれば何ら問題はないし鎖の距離も短い。そこからひとしきり登ると小さな社の建つ刀利天狗。
そこからもゆるい樹林帯の登りが続くと道はやがて黒戸山の右側を大きくトラバースし、5合目まであと5分の表示を過ぎると道はかなりの下りとなる。ああ勿体無い。ほどなく5合目小屋に着いたが休業中のようである。なおも1分ほど下ると鞍部に廃屋状態の屏風小屋。裏手の社には「誠意行者」と書かれた石碑がある。ここから屏風岩横の斜面を一気に黒い木のハシゴで登る。登りきっても鎖やハシゴが断続的に現れる。1箇所だけ本当に鎖を頼らねばならぬところがあり、汗まみれの上に冷や汗をかく。汗が目に入って痛い。
いいかげんにしなはれ、おっさん、などとこのサディスチックな登りに毒づきながら登りつづける。全体的な登りペースもシャクナゲ帯に入ってからは急になったようだ。岩の間を縫うように登りつづけると、ひょっこりと七丈小屋の建物が視界に入った。とりあえず本日の行程は終了である。小屋は相当混雑しており小屋番氏がてんてこ舞い状態であったが、夕食にはマグロの刺身が出た。
狭いスペースでの雑魚寝・枕なしではあまり眠れないまま朝3時半になり、未明出発組の物音で浅い眠りから覚める。このゴタゴタにまぎれてトイレに行く。午前四時半に朝の山小屋に「グリーンスリーブス」のモーニングメロディが流れる。5時過ぎに朝食。皆が納豆をかき混ぜる。さて頂上までコースタイム2時間半。正念場である。
六時前にアタック開始。七丈第二小屋のわきのハシゴを登りテント場を過ぎ、ひたすら急登の連続となる。昨日のように自分の歩幅では登らせてくれずエイ・ヤーとホールドして次のステップに足をかける。気合で登りつづけるも寝不足と高山のせいで足取りが覚束ない。ハイマツが現れはじめ、森林限界が近くなった。集中力だけは切らさぬようにして、はあはあ言いながら八合目の鳥居をくぐる。振り返れば雲海が美しい。鋸岳と鳳凰山が見える。地蔵岳オベリスクの後ろには富士山が控えている。
朝六時半だが暑いので長袖シャツを昨日と同じTシャツ1枚になって登る。さああと1時間半だ。今の私の登山レベルで黒戸尾根経由の甲斐駒登頂は金星に近い。八合目の先、1箇所だけ難儀な鎖場があった。鎖で体を支えつつ、自らの体を右上の岩へスライド・プットせねばならず、登りきったときは心臓がドキドキした。そこからも岩の間をひたすら登る苦しい道が続く。こうなればもはや気力の闘いである。get my truth,just my truth、山登りをする私、仕事に明け暮れる私、パソコンゲームに興じる私、本当の自分とは一体何であるか・・・余りにも困難な登山のためか思索も禅問答になってきた。
目の前に大きな山がありアレが頂上ではと思っていたが、太刀・烏帽子岩を過ぎると一番上にパルテノンのような建物が見えた。ガイドブックなどで見覚えのある頂上の建物だ。ほどなく駒ヶ岳神社本社の横を通り、摩利支天分岐からの道を合わせようやく甲斐駒ヶ岳頂上にたどりついた。小屋から1時間40分。登頂のポーズ・決めっ。
甲斐駒頂上にて、登頂のポーズ。
さすがに展望は抜群。北側は雲海の上に八ヶ岳・奥秩父が聳え東側は富士山、そして鳳凰山からの早川尾根が続いている。アサヨ峰の形が良く、栗沢山が大きい。南側は仙丈岳が間近に、緑のカールが大きく見える。そして早川尾根の向こうには白根三山から南アルプス主脈が果てなく続く。西側は鋸岳、遠くには伊那谷平野をへだてて中央アルプスが見える。中央アルプスの右奥には北アの山々も見える。
頂上で写真をとりまくったあと、気の抜けない下山にかかる。ザレザレの強風が吹く斜面を慎重に下り摩利支天分岐からはトラバース道。そこからすこし登ると六方石。そこからは岩のゴロついた尾根上をぐうんと駒津峰へと登り返す。北沢峠から来た幾人もの登山者とすれ違う。デポしたザックも多く見受けられる。苦しい思いをして駒津峰着。ここから見る甲斐駒は白亜の城砦のごとしである。
双児山の登り返しを嫌い、仙水峠へと下る。ここの下りは岩のゴロゴロした中のかなりの急な下りである。歯を食いしばりながら慎重に下り行く。ほどなく樹林帯に戻り、霧がすこし出てきて仙水峠。ここからは露岩の上を飛ぶようにタンタンと軽やかに歩き、再び森の中に入るとテントサイトに入ると仙水小屋。ゴールまでもう少し。そして沢沿いをどんどん下る。1箇所だけロープが張られており集中する。そこからは沢の流れをからみながらの良い下り道。清き流れに魅せられて、顔や手をじゃぶじゃぶ洗い、山行きの汗を流す。
堰堤を何個か越えると北沢長衛小屋。テントサイトの脇からゆっくり登ると林道に出てすこし歩いて北沢峠。10分待ちで満員のバスに乗り(荷物料はディパック1つなので取られなかった)広河原から格段に速い相乗り直行ジャンボタクシーで甲府に出、気が大きくなったか特急券を買い13時10分発の特急あずさ60号に乗ったが自由席は座れず、立ったまま甲府の次の停車駅の八王子を待った。