YAMAMIX CLIMAX 2006 SEMIFINAL

96 トムラウシ 2141m

2006年7月23日(日)  所要時間10時間27分 費用発生:109,600円( 97羊蹄山込み)

前夜1839八王子・・・神田・・・浜松町1937・・・2000羽田2100***2230新千歳空港2250・・・2253南千歳2351・・・235新得240=400短縮登山口409−429温泉コース分岐−514カムイ天上−630コマドリ沢−752トムラウシ公園800−840南沼キャンプ場−909トムラウシ920−1027トムラウシ公園−1130コマドリ沢−1238カムイ天上−1316温泉コース分岐−1436トムラウシ温泉1615=1745新得1813・・・2013札幌2044・・・2117小樽2229・・・2338倶知安

北海道の百名山の中で幌尻岳についで2番目に難しいといわれているのがトムラウシ山である。アプローチの難しさ、コースタイムの長さ、ヒグマの恐怖?などもあってこの山はおいそれとは登れない。私もトムラウシを今の今まで先送りしてきたが、もう他に登る山も限られてきたのでもうやるしかないと心の中で覚悟を決めた。前回の知床ツアーの翌週にやるつもりだったが、天候を見て1週間延ばして、ゲンのいい32歳のバースデーの前夜、私はある種悲壮な決意で八王子駅のコインロッカーに預けてあったザックを取り出し、羽田へ向かった。この山は百名山の本を読んでからどうしようかと考え続けていた山だが、「あこがれ度」と「想定している難易度」の両方が高いせいか、どうしても自分が頂上に立つイメージが浮かばない。こんなのは異例だ。

羽田の待ち時間でギンダラの西京焼き弁当を平らげ、21時0分発ANAの千歳行き最終に乗る。緊張からか寝付けない。羽田で買った暇つぶしの経済本を読みながら千歳をじっと待つ。一時間半が過ぎて新千歳にランディング。北海道も4回目ならもう慣れたもので、地下のJRホームへ向かい南千歳までは一駅、ここで夜行特急「まりも」を待つ。このパターンも3回目だが、今回は2時35分着の新得で降りなければならない。寝過ごしたらそこで計画は頓挫する。それでも車中ですこしだけまどろんだ。気がついたら列車は新狩勝の信号場で対向列車の交換待ちをしていた。私は居住まいを正して新得を待った。トンネルをいくつか抜けて2時35分、新得。ここからのタクシーは事前に予約しておいた。

タクシーは闇の中を北へ疾走しメーターもどんどーんと上がっていって、やがて道がダートに変わり、トムラウシ温泉分岐を過ぎると勾配が少しきつい道となりタクシーはうなりをあげて進み、ほどなく夜が明けて4時ころトムラウシ短縮登山口に到着した。数組の登山者が出発の準備をしている。懸念していたタクシー代は深夜割増しが入ったこともあり16,450円であった。こんな巨額の資金を使ったら失敗できない。菓子パン2つを食べて出発。ゆるい勾配の道を20分ほど進んで温泉コースの分岐。右に折れてさっそくドロだらけの急峻なのぼり。前夜はほとんど寝ていないし、きょうは先がおそろしく長いのでゆっくり登るよう心がけた。

早朝に仕掛けたということもあって、この山は蚊がけっこう出て歩きを楽しむどころではなかった。長袖シャツを着ているが袖口や顔面に蚊は容赦なく攻撃してくる。耳元で音がしたのであわてて首筋や頬をこすると手にはつぶされた蚊が、ということも何度かあった。かゆみに耐えながら進んで行く。手の甲や手首への攻撃はあっ来たなこのヤロウ、ぺちっ。と反応できるが顔は刺されるがままだ。カムイ天上の先で旧道(数年前コマドリ沢で死亡事故があって、尾根上を迂回する新ルートが切り開かれ旧ルートは閉鎖された)を分けて、その先は笹の切り株と泥濘の緩い上り坂。1500mまで高度を上げてからコマドリ沢へぐうんと100mちかく下る。

ロープにすがる箇所もあってどうにか沢までおりたち、旧道と合流してからすぐにコマドリ沢。ここまで2時間20分を要したがまだまだ先は長い。このあとすぐに雪渓の登り。かなり長く感じたが、斜度がそれほどでもないのでアイゼンは使わずに通過できた。そこからひと登りしてから高度1600のあたりで岩のごろごろした斜面を横切ってから、急登をひとつしのいで前トム平。シマリスを見る。そのあとは平べったいロックガーデンを過ぎそのあとやや大きなゴロ岩でできたロックガーデンをあせらず慎重に通過。このあと道は10分ばかり下り、おりついたところがトムラウシ公園。なだらかな緑のカーペットに池塘、霞に見え隠れするトムラウシ山・・・まさに天上の楽園である。腹も空いたのでここで菓子パンの行動食。

yama06_tomura.jpg (15019 バイト)トムラウシ公園

トムラウシ公園からまたゆるいのぼりに転じ、ゆっくりと登ってゆく。標高2000mに達するころ、稜線からの道を合わせる南沼のキャンプ指定地に出た。いよいよトムラウシまであと30分、右手に聳える猫の頭のようなピークにとりつく、耳のてっぺんが頂上である。息を切らしながら苦しいのぼりを耐え、はやる気持ちを抑えながら進む。岩峰の間を進み行くとのぼりの終わりが見えた。頂上には丸太に「トムラウシ山」と刻まれた標柱が立っていた。午前9時9分、私はその標柱に万感の思いを込めてタッチし、人目も構わず「やったぁ」と叫んだ。あいにくガスで遠望が利かないが、頂上からはコバルトブルーの北沼が見えた。

帰りも長いので頂上には10分だけいて、引き返す。急峻な下りを慎重に下って南沼キャンプ指定地を通過。しばらくはのんびりとした下りが続く。広大な景色を堪能しながら意気揚々と進み、トムラウシ公園を通過。ここでは多くの人が休んでいたので、雪渓の上で休憩することにしてまずは眼前の上り返しを10分間こらえる。そのあとロックガーデンの下り、トラバース、平らなロックガーデンを横切り、前トム平を通過して急な斜面をひとつこらえて、またまたロックガーデンを横切ったところで休憩。菓子パン2個を押し込む。

雪渓の下りは油断できなかったが何とかしのいで、コマドリ沢を渡る。このあとはここにきての登り返し。7時間以上経過した後ののぼりはこたえる。勘弁してくれと思いながら急峻なのぼりを堪えて、ようやく尾根の新道に出る。後は下るだけなのだがところどころに泥濘が。カムイ天上を過ぎてからは道がやや急峻になってえぐれた泥道で登山靴がドロドロ。昼間なので蚊の猛攻が少なくなったのが救い。高度計の数値を1000くらいまで落として、温泉コースの分岐まで戻ってきた。短縮登山口までは20分かからないが、帰りもタクシーを使うわけには行かないのでトムラウシ温泉までは昔からの登山道を歩くことにした。

トムラウシ温泉への下り道はさほど歩かれていないので泥濘の箇所もなく、樹林帯の中の気持ちよい下り道であったが、ところどころ倒木が道をふさいでいたところがあって、モロにふさいでいるところは笹が刈り払われた迂回路を見つけて進み、くぐれそうなところは膝をついて四つんばいで通過。もはやリンボーダンスをする気力はない。誰にも出会わず不気味な感じがしたのでラジオを聞きながら進む。やがて、下り道がやや急峻になってそれを過ぎると林道と交差し、なお進むと眼下にトムラウシ温泉の建物が見えた。14時36分、実に長く苦しい歩きが終わった。

トムラウシ温泉の露天風呂では存分にくつろいだ。温泉に漬かりマッサージいすで体をほぐして、16時15分の新得行きのバスに乗る。夏季に一日2本しか運行されない貴重なバスであり、これを利用できればバカ高いタクシー代が片道ですむのだが、バスの乗客は私ひとりであった。バスの中でひと眠りして18時少し前に新得に戻ってきた。真特発18時13分の特急「スーパーおおぞら10号」でまずは札幌へ向かう、石勝線の景色を見ているうちに眠くなって、20時13分、札幌に到着。小樽行きの快速に乗り継ぎ21時過ぎに小樽着。寿司屋に入り32歳のバースデーとねんがんのトムラウシ登頂成功を祝った。寿司も吸い物もうまかった。

だが長い一日はまだ終わらない。駅へ戻って22時29分発の倶知安行き最終列車に乗る。一両のディーゼルカーは闇の中を走り、余市、仁木で数人の客を降ろし、小沢を過ぎてトンネルを抜け、23時38分、倶知安到着。予約しておいた駅前のビジネスホテルに到着。疲れたのですぐさま寝る。

97 後方羊蹄山 1898m

2006年7月24日(月)

630倶知安=645羊蹄山登山口−900六合目−952八合目959−1012九合目分岐−1102後方羊蹄山(喜茂別ピーク)−1136九合目分岐−1148八合目1156−1235六合目−1325二合目−1355登山口1403−1433国道5号羊蹄登山口1440−1500比羅夫1615・・・1813小樽1834・・・1946新千歳空港2035***2200羽田2235=2335聖蹟桜ヶ丘2340・・・2345高幡不動

なんという強行軍であろうか、昨日トムラウシで死闘、そしてきょうは羊蹄山。この山は難易度は高くないが、単純な標高差の引き算では登山口300mから1900mまでの1600mを稼がなければならない甘く見てはいけない山だ。しかし次回に幌尻と組み合わせることを考えたらこっちのほうがマシと考えトムラウシとセットで登ることにした。大雪のときは夜行の座席、羅臼のときは山小屋で寝袋、それに比べれば今回はホテルで寝られたからナンボかマシではないかとも思う。ともかく6時過ぎに起きて菓子パンの朝食を済ませ6時半、倶知安駅前からタクシーに乗る。車は国道5号線を疾走し、しばらくすると左に折れて羊蹄山登山口に到着。タクシー代は2300円であった。きょうは曇りで山は見えない。

意気上がらぬまま出発。この山は熊は出ないといわれておりそれだけが救いだ。なだらかな道をしばらく進んだ後は狭いトレイルで急峻な登り。しかも夜来の雨でじめじめしておりステップに気を使う必要があった。あたまでは別のことを考えながら登ろうとするが体は昨日の後遺症でガタガタ。ひと登りして二合目。なおだらだらした登りが延々と続く。もうタスケテクレとも思うが我慢して登るほかない。我慢比べのような2時間が過ぎ、標高も1200を越えるころ六合目を通過。このあたりから低木帯となり、ときおり枝で頭をごちんとぶつけてしまう。

標高1600の八合目で一休み。週刊誌や普段靴などの不要な荷物をデポし、再びのぼりを続ける。ほどなく九合目の分岐。ここで頂上へは左手の道をとる。ハイマツのトンネルっぽい道を進み、ほどなく烈風吹きすさぶ火口の稜線に出る。けっこう厳しい風が吹きつけてくる。大岩のたもとでジャンパーを羽織る。独立峰なので風はあるだろうと踏んでいたがこれほどとは思わなかった。霧雨混じりの烈風なのでメガネがあっという間に曇る。コースサインが見えなくなるのでティッシュでメガネをふきふきしながら進んだ。

ビョービョーと吹きまくる風に叩かれながら前進し、ケルンをいくつか見ると三角点ピークの横を通る。このあたりが頂上だと自己認定して引き返したくなったが、最高点の喜茂別ピークはまだ先だ。京極分岐を分けてなお強風の稜線上をコースサイン頼りに進むと、喜茂別コースとの分岐に出て、右手の稜線上のピークに頂上の標柱らしきものが立っているのが見えた。はうようにしてそこまで上がって「羊蹄山頂上」と書かれた標柱にタッチ。ここまで4時間20分を要したから楽な山ではない。セルフポートレートを撮った後クルンと引き返す。帰りも風に打たれまくって散々であった。ようやく稜線を脱出してハイマツトンネルを過ぎ、九合目の分岐まで戻ってきた。そこからひとくだりして八合目まで戻ってきた。ここで菓子パン2つの行動食。

あとは単調な下りを耐えしのぐだけである。だが傾斜が急なので集中を切らしてはいけないし、当方も疲れきっている。高度計の数字をみながら早く終われと思いながらひたすら高度を下げてゆく。1200、1000とくだっていくうちに低木帯から樹林帯へとあたりの様相が変わっていった。やや晴れてきて、ときおり眼下の倶知安方面がすこしばかり望めるようになってきた。13時半すこしまえに二合目を通過。そこからやや泥濘がかった急な下りをちょっとこらえると、もとの平坦な道に戻った。ヤレヤレと安堵。

14時前に登山口まで戻ってきた。復路もタクシーを使うわけには行かないので30分ほどイモ畑の中の車道を進む。国道5号まで降りても手近なバスの便がなかったので、さらに20分歩いてJRの比羅夫駅まで出て、そこで小樽行きのディーゼルカーを一時間待った。比羅夫駅のベンチにへなへなと座り込む。かろうじて強行日程をしのいだ。あとは列車を乗り継いで千歳へ出て飛行機へ帰るだけだ。比羅夫発16時15分のディーゼルカーに揺られ、小樽からは新千歳行きの快速電車に乗り継ぐ。銭函まで日本海べりを通るよい眺めである。札幌で途中下車してうまいものを食いいいく気力もない。これで百名山の残りは、幌尻岳、薬師岳、朝日岳のあと3となった。よくここまで漕ぎ着けたものだと思う。

98 幌尻岳へ進む

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