YAMAMIX CLIMAX 2006
2006年7月3日(月) 所要時間8時間17分 費用発生:91,000円〔93大雪山込み〕
(前夜)1805八王子・・・1853神田1855・・・1903浜松町1905・・・1927羽田空港2015***2145新千歳空港2215・・・2253札幌2305・・・(はなたび利尻)546稚内630〜810鴛泊FT=826北麓野営場−833甘露泉840−900四合目−1000七合目−1040長官山−1051利尻山避難小屋1120−1140九合目−1200沓形分岐−1225利尻岳1235−1324利尻避難小屋1337−1518甘露泉1528−1536野営場−1600利尻富士温泉1621−1640鴛泊FT1730〜1910稚内2205・・・312旭川
06年のシーズン前の時点で日本百名山の残りは9座であり、そのうち7座が北海道にある。資金難と休日難とヒグマへの恐怖で昨年までまったくの手付かずだったのだが、そろそろ処理しなくてはならない。鍋物にはいっている春菊(筆者は春菊が食べられない)を嚥下するかの感で、行きたくもない山に無理やり行くようだが、ここまできてしまったらじたばたしても仕方がなく、1泊2日で利尻を処理するプランを練った。
さて、日曜の夜18時に会社を抜け出し、駆け足で八王子駅へ向かう。今回の計画は絶妙にして華奢であるからきちんと電車や飛行機をのりついでゆかねばならない。18時5分の中央特快で都内へ。懸念していた中央線のトラブルもなく、神田で京浜東北線に乗り換え、浜松町でモノレールに乗り換えて、羽田空港へ向かう。やはり空を飛ぶということは電車とくらべて異常なのか、緊張というか胸の高鳴りというか気疲れがする。フライトの40分前に搭乗手続き。ここまでは予定通り。
20時15分発の札幌行きスカイマークは折り返しの関係で離陸がすこし遅れてヤキモキした。22時15分の快速エアポートに乗れなければすべてオジャンなのである。羽田空港構内の誘導路をのっそりと走った後滑走路に入り慣れていてもあまり気持ちのいいものではない急加速があって、飛行機は空へ飛び立つ。順当に1万メートルまで高度を上げると窓外は何も見えずただ闇ばかりである。羽田で買った唐揚げ弁当と冷しおでんのゼリー寄せを平らげ、しばらくするともう着陸態勢のアナウンスが流れ、北海道の夜景が見えたと思ったら新千歳空港にランディング。
ザックを受け取ったのちJRホームへ急ぎ、快速エアポートに乗る。どうもあわただしくていけない。3連休カードをこんな山で切りたくなかったのと、日程作成者の能力の折り合いでこのような強行スケジュールができてしまった。すくなくとも3連休以上をひと夏で複数回取るわけにはいかない。抱えている仕事のほうは打っちゃらかせても、社内への世間体みたいなものがある・・・。そんなことを考えながら過ごしているうちに、列車は札幌市街に入り、左手に「白い恋人」とコンサドーレ札幌の看板が見えて、22時53分、札幌着。
駅の売店で暇つぶし用の「週刊ベースボール」とミネラルウォーターを買った後、23時5分発の臨時特急「はなたび利尻」に乗り込む。この列車にはお座敷車が連結されていて、毛布や枕もあって、指定席特急券だけで寝ながら移動できるというお得な車両である。ふだんは自由席派の私も、この指定券は東京で予め買っておいた。ディーゼルカー1両まるごとお座敷で、旅館の広間のようである。車掌の検札を待って、そのあと横になる。仕事疲れからか良く眠れて、朝五時過ぎに稚内のすこし前で朝陽がまぶしくて目が覚めた。列車はサロベツ原野のなかを走っている。こんなところを列車が走るのが不釣合いなほどの、何もない丘と原っぱである。兜沼のあたりで日本海越しに、きょう登る予定の利尻岳が見えた。海面から突き出た孤島がひとつの険しい山というか、城砦をつくっている。
稚内着5時46分。駅前旅館街をしばらく歩き右折して全日空ホテルの前を通るともうフェリーターミナルで、六時前だというのに中高年観光客の団体ツアーの大群でにぎわっていた。「はなたび利尻」は気の毒なほど空いていたので対照的である。往復チケットを買った後、列に並ぶ。出港時刻の六時半、盛況の平土間船室でひといきついたあと朝食のおにぎりを食べ、大一番に備える。ほどなく目の前の利尻島と礼文島がだんだん大きくなってきて、ペン岬が見えてきて、8時すぎに鴛泊フェリーターミナルに着岸、急いで下船し、タクシー乗り場に走って「北麓野営場まで」と告げる。タクシーは麓の道路を勢いよく走ってほどなく野営場着。タクシー代は1170円であった。甘露泉までは石畳の遊歩道が整備されている。
甘露泉のたもとで登山靴に履き替え、Tシャツ一枚になって(これは失敗であった)出発。乙女橋をすぎてしばらくは緩やかな登りが続く。20分ほど登ると四合目、そのあとも5合目、6合目と順調に通過。ここの合目基準は直線距離で測定しているので傾斜のきつい後半が大変なのである。六合目のあたりから低木帯の斜面になり、頭上から直射日光がカアッと照りつけてきてたまらない。傾斜もだんだんきつくなってきて、時々頭を木の枝にごちんとぶつけて痛い思いをした。
この山、想像以上にきついなと思いながら、行動開始から2時間が過ぎるころ長官山にたどりついた。ここでようやく利尻岳の頂上部が見える。コーンに盛られたジェラートアイスのような、スックと聳える三角錐。こんな綺麗なピナクルは高妻山くらいしか見たことがない。形のよさに見とれながらも、あんなところに登るのかとため息がでてしまう。尾根上をしばらく進んで、薬師如来の石碑からほんのすこし下って、七合目の避難小屋に到着。たまらず休憩。再出発まで30分を要したからそうとう疲れていたのだろう。荷物の多数をデポして、頂上へアタックに出る。
20分ほど登ったところで「9合目 ここからが正念場」の標識。ここからはザクザクした富士山のような火山性の斜面で歩きづらく、ロープにすがって登るところもあった。大パーティーの登山ツアー軍団を追い越したりすれ違ったりしながら苦しい登りを20分くらいしのいで、沓形コースの分岐を過ぎる。そこから先も大変苦しい道が続き難渋した。草いきれがなくなって暑さが和らいだことだけが救い。足の置き所を慎重に見ながら登っていくと、ようやく頂上の祠が見えて、そこへ向けてやせ尾根を進み、ようやく利尻岳の北峰頂上にたどり着いた。登頂のポーズ、決めっ!
水を飲みながら絶景を堪能。利尻島の麓はもちろん礼文島や東側の稚内方面まで見渡せる。北側のかなた、霞の間にある陸影のようなものはサハリンであろうか。帰りのフェリーのこともあるので休憩を10分で切り上げ、急な下りに挑む。登りでスタミナの大部分をロスしていただけに苦しかった。足が思うように動かないので、自信のないところは体育座りの格好でズリズリと下った。何回か転倒したが、沓形コース分岐を過ぎると幾分ましな下りになって、ザクザクした石の上に足を置きながら下って、頂上から50分ほどで避難小屋まで戻ってきた。アップルパイ2個の行動食。
一休みしたあと、長官山への登り返しをしのいで、やや急な下りをたんたんとゆく。足元の危険はなくなったがとても暑い。北海道北の果てといえども暑いときは暑いことを思い知らされた。小屋を出てから一時間、ようやく傾斜が緩くなってきたが緩い下りが延々と続く。木陰や岩陰で休憩する登山者を何組か見ながら、六合目五合目四合目としのいでいって、ようやく乙女橋を渡った。息もたえだえに甘露泉にもどりついた。つめたい水をごくごくと飲む。足元がこきざみにふるえていた。
北麓野営場まではすぐで、あとは鴛泊まりへの車道を淡々と歩いた。途中の利尻富士温泉で汗を流したあと、鴛泊のささやかな町並みに戻った。ここから眺める青空と海をバックにしたペン岬の形がよい。フェリーターミナルそばの店に入り、うに丼は品切れだったので海鮮丼(2,000円)を食べた。17時30分のフェリーであわただしく島を後にした。船上から見上げる利尻富士の荘厳なこと。よくあの上まで行ってこれたものだと思う。五時過ぎだというのにまだ空は青い。もっと眺めていたかったが、海風はさすがに冷たく、明日のこともあるので船室に入ってザックを枕にまどろむ。
フェリーから利尻岳を望む
19時10分、稚内着。列車の時間まで間があったので、海産物店を瞥見した後、夕暮れの稚内の街をぶらつき、一軒の店に入る。どちらかというと観光客向けのしっかりしたつくりの店だったので、ねんがんのうに丼を食べることができた。が、この程度の味で2500円か、という思いはあった。八王子のすし店でたまに食べるのと大差は無いように思う。やはり利尻島内で食べないといけないのか、それとも私には味の違いがわからないだけなのか。サハリンビールともずく酢で92座達成を祝った。
22時5分発の夜行特急「はなたび利尻」で稚内をあとにした。自由席車両は4号車の1両だけなのだが乗客は5名程度と空いていた。前の席を回転させ足を投げ出してL字になってたちまち眠る。旭川に気づかないくらい疲れていたらそのまま札幌へ直行しようとも思っていたが、うまいぐあいに旭川の手前で目が覚めた。
2006年7月4日(火) 行動時間3時間35分
500旭川=551旭岳温泉610>>>620姿見640−652姿見池−826旭岳844−1015姿見1030>>>1040旭岳温泉1230=1317東川道草館1356=1441旭川1500・・・1620札幌1940・・・2016新千歳空港2110***2245羽田空港2300=2341調布2345・・・005高幡不動
北海道の百名山の中で比較的登頂が楽なのが、前年に登った雌阿寒と、この大雪山である。前者は標高が低く、後者は標高こそ2290mと北海道最高峰を誇るものの1600mまでロープウェイが通じ、旭岳に限っていえば多くの観光客登山客が訪れるので北海道らしい原始性奥深さとは無縁のポピュラーな山である。今回利尻のついでに旭川を通るという理由だけで登るのだが、なんだか殴り込みの帰りにチョット大根を買ってくるかの感があり気乗りしない。ともかく2時間ほど旭川駅の待合室でボーッとしたあと5時過ぎに駅前からタクシーに乗る。昨日同様朝陽がまぶしい、車は朝の旭川盆地を疾走したのち山間にはいってゆくが後半はメーターが気になってしかたがなかった。旭岳温泉までのタクシー料金は11,000円だった。(バス利用では本数が少なく、今日中に東京まで帰れる自信がなかった)
ロープウェイ乗り場には早くも長蛇の列が出来ていた。2便目のロープウェイで姿見駅をめざす。あっという間に高度を上げて1600mの姿見駅に到着。朝食のパンを売店で買って、ホットコーヒーでそれを流し込む。コインロッカーに不要な荷物を預けて、気の進まぬまま重い腰を上げる。二日連続の夜行明けなので本来の調子など出るわけがない。強行軍のそしりを免れないが、二時間少々粘ればいいのでこのくらいハンデだとも思う。雪田の上を横切って遊歩道を登り気味に進んでいって、15分もしないうちに雪に覆われた姿見の池。ここから登山道に入る。
左側は噴気孔のある谷。その右に登山道のある尾根が金庫岩そして旭岳のほうへ続いている。本気を出すとバテるに決まっているので、わざとゆっくり歩くことを心がけた。標高1800付近に雪の残った斜面を登る箇所があって、キックステップをすこし使った。そのあとも殺風景な岩ガラガラの斜面を適当に登ってゆく。トムラウシの眺めが雄大である。そこまで続くなだらかな稜線も胸を打った。標高2000を越えて金庫岩が近くなって、登りが若干きつくなるが昨日の利尻ほど神経をつかうところではなかった。ほどなく20名ほどの大ツアーに追いついたので、末尾にひっついて上ってゆく。
「この四角い岩は?」「金庫岩」「ギンコ?」「お金を入れる金庫の、キンコ岩」「そんな形してるなあ」「金庫かア、私には縁がないなあ」そういう会話が交わされるのを聞きながらなお進み、眼前のこんもりとしたピークを登り、わりあいあっさりと旭岳のピークにたどり着いた。たちまち頂上の標識は大ツアーの面々の撮影会場と化した。はい登頂のポーズ決め。しんどかった。それにしても間宮岳や北鎮岳などの大雪連峰のピーク群の威容はどうだろう。手招きしている峰峰。やはり縦走したほうがよかったかとも思う。が、いまの私にそんな力は残っていない。早々に引き返した。
酔っぱらいか病人のようなおぼつかない足取りで斜面をとて・・・とてと下り、1800m付近の雪の斜面では下る自信がなかったので左手を迂回。姿見の池のすこし上で高校生の集団登山とすれ違う。遊歩道に戻って雪田を横切り、ロープウェイ駅には10時15分ころもどりついた。昨日今日と半袖Tシャツで行動したので、ひじから先がかなり日焼けしてしまった。ロープウェイで下界に戻る。カンカン照りの日差しがまぶしい。とりあえずソフトクリーム(300円)を食ってひといきついて、そのあと日帰り入浴できる温泉をさがす。あまり歩きたくなかったのでバス停に近いリゾートホテルで風呂に入ったが1,500円もした。
バスを乗り継いで旭川へ15時前に戻り、特急スーパーホワイトアローで札幌へ向かう。特急列車は石狩平野を快走し、16時過ぎに札幌まで戻ってきた。とうきびの屋台が並ぶ大通り公園や時計台を散策して札幌観光らしきことをして喫茶店で一憩。さすがに芯からくたびれた。はやくわが家に帰って寝たいと思う。駅に戻り、19時40分の快速エアポートで新千歳へ向かい、そして21時10分のスカイマークで羽田へ飛ぶ。むちゃくちゃな日程をこなした充実感と、あと7座だフハハハハという思いと、その何倍かの疲労感を抱いて家路についた。