YAMAMIX CLIMAX 2005 

85 鹿島槍ヶ岳 2889m

山紹介及び最も楽な登り方:

北アルプス後立山連峰グループ中、その颯爽とした双耳峰のいでたちは一級品。五竜のたくましさとはまた別のよさがあります。南峰が最高点でありますが、北峰との間をつなぐ吊尾根の曲線もみごと。個性派揃いの北アルプスの山々のなかでのひときわ強烈な存在感を持っている名峰です。JR大糸線から望めるのもポイントが高い。最も楽な登り方は、マイカー利用なら大谷原からの赤岩尾根だが、扇沢からの柏原新道も爺が岳越えのハンデがあっても交通の便が良く、また道も良いのでおすすめ。ガイドブックではおとなりの五竜岳と二泊三日のセットで登られる記述が多いが、五竜・鹿島槍間の八峰キレットという難所の通過があるので、別々に登る人のほうが多い。

山行記録:2005年7月23−24日(土・日) 総所要時間12時間10分 費用発生27,000円

040八王子・・・508信濃大町513=550柏原新道登山口555−838種池山荘848−935爺が岳中峰−1025冷池山荘1100−1148布引山−1231鹿島槍ヶ岳1300−1331布引山−1425冷池山荘(泊)510冷池山荘−617爺が岳南峰−644種池山荘650−826柏原新道登山口838−850扇沢905=937信濃大町1037・・・1133松本1147・・・1233上諏訪1331・・・小淵沢1406・・・1632高尾

前年、五竜岳から望んだその山容に胸打たれたのでこの夏に鹿島槍を登ろうと思い立った。この山は大糸線沿いに連なる後立山連峰の縦走路中にあるため、多くのルートが考えられるが、1泊2日で処理するとなると大谷原からの赤岩尾根コースか、扇沢からの柏原新道コースに絞られる。私も、やるとすればアップダウンのすくない登り詰めの赤岩尾根コースかなと考えていたが、取り付きの柏原新道コースが、多くのサイトが異口同音に「楽に稜線に立てる」と評しているので、急登嫌いの私は爺が岳のアップダウンはあれど扇沢からやろうと判断した。

前日、夜十時に会社がはねて、乗るべき夜行快速「ムーンライト信州」の発車時刻は0時40分であるのでどこかで時間をつぶさねばならない。したがって私は行きつけの居酒屋へ行き、ワインを飲みながら日付が変わるのを待った。二時間ほどいて、赤ワインはあとのことを考えて一杯しか飲まなかったが、マグロ刺身やらハラミ焼きやら海鮮サラダなど食べたので満腹し、ほろ酔い状態で京王八王子駅前のスーパーで菓子パン9個を購入し、八王子駅へ向かった。イカの塩辛も食べたので喉がやたら渇く。

梅雨明け直後の金曜日の夜なので「ムーンライト信州」は満席の盛況で、指定された座席も通路側なので眠りづらい。窓側なら窓枠に凭れてまどろむ芸当ができるのだが。とはいえ酔いも手伝ってか、甲府から塩尻くらいまでは眠れた。夜が明けて、列車は松本から大糸線に進入し、豊科、穂高で常念・燕方面の客を降ろし、5時8分信濃大町着。タクシー相乗りで扇沢手前の柏原新道登山口へ向かう。

扇沢橋のたもとから沢沿いの登山口を6時前にスタート。今日の天気は曇りまたは霧雨であまりよくないが、日が射さないので自分のペースで登れる。すぐ尾根取り付きの急な登りとなったが、随所に木のステップがあって整備されているのでさほど苦しさを感じない。一時間ほど順調に高度を上げるとケルンの標識。ここからは傾斜が若干ましなものになる。例によってMDウォークマンを耳に当て、KOTOKOさんを聴きながら黙々と登る。標高2000のあたりから道は巻き道の様相を濃くし、高度計の数値がなかなか上がらなくなる。この道は随所に「一枚岩」「石畳」「水平道」などの地点?を示す道標はあるが、いまどのへんなのかがわからないのがつらい。

標高2200のあたりで「この先ガレ場があるからここで立ち止まって呼吸を整えろ」旨の親切な看板があり、そこを通過してしばらくすると、爺が岳南面の雪渓を渡る。そのあと傾斜がふたたびきつくなってしんどい登り。ゆうべ大食してスタート時点で食欲がなかったので、きょうはまだ何も食べておらずシャリバテ気味になってきたが強引に登る。ほどなく道幅が広くなり、霧の中からゆらゆらと三角屋根の建物が見えてきて、種池山荘に到着。スタートしてからまだ三時間たっていない。こんなに楽に稜線に上がれるとは。小屋前のベンチに座り、ジャムパンとアンパンとメンチカツバーガーを猛然とほうりこむ。

さて爺が岳越えである。しばらくは南峰へのゆるやかな登りが続くが、富山側から雨混じりの霧が寄ってくるので寒さを感じる。何も見えないのでやはりMDウォークマンの音楽を聞きながら淡々と進む。ほどなく爺が岳南峰の巻き道分岐に出た。律儀に登って、爺が岳南峰頂上の標柱にタッチ。鞍部まで下って、また爺が岳最高点である中央峰の登り返し。またもピークに寄る道と巻き道の分岐に出たが、この山も中学校の美術の教科書に絵画モチーフで出てきたほどの山なので、きっちり登っておく。標高2670mの中峰頂上を通過し、そのあと稜線上をつらつらと進んだ後、冷乗越へ標高差300mを下る。せっかく稼いだ高度を、ああもったいないと思う。

ジグザグの下りを続けていると、霧が若干ではあるが薄らぎ、眼下の赤岩尾根や冷乗越が見渡せるようになった。振り返れば爺が岳が大きく、ピークから種池山荘方面へ優美な曲線を描いている。調子付いて石のガラガラした道を下って、赤岩尾根分岐を過ぎてなお下り、いったん樹林帯に入ってじめじめした最低鞍部を通過。登りに転じてしばらくすると山小屋独特の発電機の音が聞こえ出し、ほどなく冷池山荘に到着した。まだ十時半なのでここで本日は終了とするわけにもいかない。

宿泊手続きをすませ、余分な荷物を小屋に置いて鹿島槍へのアタックに出る。すこし登ると冷池山荘のテント場、そこからお花畑を見ながら、ゆるやかな道をすすんでゆく。右手にいくつか雪渓を見ながら稜線を進んでゆくと、前衛のピーク、布引山の登りにさしかかる。ガラガラ気味の道をジグザグに登って、そのあとピークの左側へ突っ込んでいってひと登りして、布引山頂上に出た。そのあと稜線上を進んで、ゆるやかな登りを経て、最後は鹿島槍南峰のピークをジグザグに近い道でのぼりつめてゆく。一心不乱に登り、霧の中の限られた視界の中、ようやく登りの終わりが見え、鹿島槍ヶ岳南峰の頂上に到着した。冷池山荘を出てから一時間半の行路であった。霧で五竜も、その間の荒々しい尾根も、鹿島槍の北峰も見えないが、とりあえず嬉しい。登頂のポーズ、決めっ!やったぃ♪

頂上で三時間前の種池山荘と同じ内容の行動食をすませ、一時ころ頂上をあとにした。ここの登山道は北アルプスのなかでは峻険さからは最も縁遠い部類に入り、脚力だけで歩けて傾斜も厳しくないので楽である。ガラガラの下りを経て、あいかわらずの霧の中の稜線を進み、布引山を過ぎてまた大きな下りをこらえると、道はゆるやかなものに戻った。行動開始から8時間が経過してさすがにくたびれ、小屋手前のテント場でザックを下ろし休憩。落ちついたあろ、ふらつく足取りで小屋へは二時半頃もどりついた。

冷池山荘は昨年に改築されたばかりで新しく、トイレも水洗で気持ちの良い小屋である。2階の喫茶室で山の本を読みながらケーキセット(950円)を注文。疲れているので紅茶がうまい。5時半からの夕食は鯖の塩焼き、シュウマイ、春巻きなど平凡無難なものであった。きょうの冷池山荘は盛況で、敷き布団ひとつを二人で共用するパターンだったのでなかなか寝つけなかったが、いつもどおり眠気を催す頭痛薬を飲んで、多少なりとも眠る事ができた。

翌朝は5時からの朝食を平らげたあと昨日と同じルートをもどりにかかる。きょうは快晴で、鹿島槍や立山・剣を望みながらの尾根歩きができそうである。冷乗越までくだった後、爺が岳への登り返しを堪える。山行二日目で寝不足なので体調万全とはいえず、苦しいのぼりだがなんとか300m高度を稼いで、中峰は巻いたが南峰は最後のピークとして踏んでおく。さすがに展望は抜群。北は鹿島槍がその優美な姿をさらし、西側は雪を残した白い立山と黒い剣岳が好対照で聳え、西から南へかけて後立山の稜線が針ノ木岳や蓮華岳方面へ続いている。かなたへ目を凝らすと槍ヶ岳や薬師岳なども見える。

爺が岳南峰をくだって、ほどなく種池山荘に戻りついた。ここからは楽な下りである。蓮華岳を見ながらトラバース気味の下りを淡々と歩き、一時間強でケルンの標識まで下った。ここから下りがすこし厳しくなるが、もはやここまで来たら気合いである。木のステップを集中力を維持しつつスタタタと下り、いくつかのターンを切って沢の音が聞こえはじめ、八時半ころ登山口まで戻ってきた。沢沿いで一休みした後バス道路を十分ほど扇沢のバスターミナルまで歩いた。扇沢発9時5分のバスで信濃大町へ出て、松本経由で例年通り上諏訪温泉で一風呂浴びてから、普通列車を乗り継いで帰途についた。

86・87 聖岳&光岳へ進む

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