2004年8月1〜4日(日月火水) 費用発生 56,300円(鷲羽・黒岳・黒部五郎トータル)
2300新宿=409平湯温泉−430あかんだな駐車場=505新穂高温泉515−615ワサビ平小屋625−730秩父沢−925鏡平955−1040弓折分岐−1142双六小屋1200−1300沢を渡る1318−1455三俣山荘(泊)
新宿高速バスターミナルを23時に出た高山行きの夜行高速バスは満席であった。いわゆる京王の中央高速バスが夏季に限り高山線には夜行便を設定している。このバスが朝4時に平湯温泉に停車し、平湯温泉は上高地マイカー規制の西の関門だからタクシーはこの時期あるだろうと読み、奥黒部の山々の登山口である新穂高温泉までは30分そこそこだから早朝にたどりつける・・・ともくろんだ。バスは中央道八王子を過ぎると車内灯が消され、夜行バスらしくなる。私は眠りながら西へ向かった。
日本100名山の北アルプスでは、奥黒部源流域に位置する鷲羽岳・黒岳・黒部五郎岳の3座が困り者で、どううまく計画を組んでも山中二泊以上を要する。百名山の残が減ってきて、そろそろこれらをなんとかしなければと考え、この3座をまとめて片付けるにはどうしたらよいか地図や時刻表や他の登山関連サイトと格闘し、日程製作者はどうにか3泊4日でこの3座(できれば薬師岳もやるつもりだった)に登るプランを作った。
午前四時、平湯温泉のバスターミナルにはタクシーは停まっていなかった。早いうちに新穂高温泉にたどり着かないとその日のうちに三俣山荘まで行くという計画がいきなり頓挫してしまう。新穂高温泉行きの始発バスは7時。私はまだ薄暗い道をあかんだな駐車場へ向けて歩き出した。あかんだな駐車場とはバスターミナルから1キロ弱はなれた所にある岐阜県側から上高地へいく人のクルマを停めさせる大駐車場である。長野県側にも似たような施設として沢渡駐車場がある。この時期ならば上高地へ行く客を待つタクシーがあるだろうと読んだ。現実にもその通りであった。新穂高温泉までのタクシー代を6000円とふんでいたが、観光客相手で基本運賃が都内より高く、かつ深夜割増が適用され、駐車場からターミナルまでの逆行分までは想定していなかったので、7800円かかった。
5時14分、新穂高温泉からあるきはじめる。温泉旅館の横を通り、ほどなく蒲田川左俣ぞいの林道歩きとなる。川を見ながら淡々と歩き、中崎橋で対岸へ渡り、笠新道の分岐を分けると、ほどなくワサビ平小屋に到着。ここまできっかり一時間。コロッケサンドと紅茶クリームパンをスポーツドリンクで流しこむ。食べ終わってさっさと歩行を再開。20分ほどで林道歩きが終わり、河原沿いの石がゴロゴロしたところをコースサインを目印に登ってゆく道に変わった。きょうはそうとう先が長いので、MDウォークマンを取りだし、倉木麻衣(ベスト版をそのままMDに落としたもの)を聞きながら歩いた。
MD1枚聴きおわる頃、あたりがひんやりとした空気に包まれると、秩父沢に出た。木材の橋を渡って一休み。タオルを水で冷やし首に巻く。まだまだ苦しい登りは続くので、もう一度倉木麻衣を聴きながら登高を続けた。途中道が直線コースとグネグネコース(こう表記してあった)に分かれ後者をえらんだがすぐに合流して、こんどは右へカーブしながら鏡平方面へ高度を上げて行く道となった。ほどなく福島から来た高校山岳部の大パーティに追いついた。きょうはあまり調子がよくないし、ノドがすこし痛かったので(この山行で私を苦しめた夏カゼの前兆・・・)大集団を追い越さず最後尾の引率教師らしき人のあとにひっついて登った。
30分くらい山岳部のあとについていたら、傾斜がきつくなりだし、前方の大パーティの歩くペースががくんと落ち、従ってストップが頻繁にかかった。最初のうちはこれ幸いとちゃっかり体を休めていたが、何回も続くとペースが乱れる。引率教師が追い越すための退避を指示したので大パーティを追いぬく。先頭の女子部員はしんどそうな表情であった。なお上がってゆくと池が見えて、鏡平山荘に到着した。あまりに暑いのでかき氷(500円)と牛丼(700円)を頼む。「シロップは?」「めろん」
かき氷はうまかった。こういう状況で食べるから当然であるが。だが次いで出てきた牛丼はまずかった。吉野家や松屋を基準にしてしまっているのかも知れないが、甘ったるいだけの玉葱と肉の切れ端がよろしくない。付け合せの味噌汁もいまいちであった。高度を上げたので槍・穂高が良く見える。北鎌尾根から続く槍は絶品。槍沢からの槍もみごとだが、ここからの眺めは北鎌〜槍〜大キレット〜穂高連峰と、その高峰のつらなりの全貌が見られるので、思わずため息が出る。この豪華な眺めは今後3日間に渡って堪能できた。
MDウォークマンをバラエティ版(いろんなアーティストを節操なく詰めただけ)に取り替えて、なお登りをしのぐ。ジグザグの登りをこらえて、ターンをきると稜線まで斜めにグワーッと登山道の線が続いている。まさに空へと続く道である。絶景を見ながら淡々と歩き、ようやく弓折岳直下の分岐で笠が岳からの稜線と合流した。そよぐ風が心地よい。槍ヶ岳や樅沢岳をみながら稜線を進むと眼前に双六小屋がみえたが、そこからが長く、いくつかのアップダウンを堪えねばならなかった。ハイマツ帯のなかを進み、山腹の西側をトラバース気味に歩いて、やがてあたりが開けて、双六小屋に到達。目の前に鷲羽岳がその優美な姿をさらし、その左奥には黒岳が控えている。双六小屋は裏銀座コースの中枢なので多くの登山者で賑わっていた。ポカリスエット(400円)を飲んで休憩。
正午ジャストに出発。双六岳方面へ20分ばかり登って、そのあと三俣蓮華岳を巻くトラバース道に入る。巻き道と言ってもそれなりにアップダウンがあり、楽はさせてくれない。暑いので一時間歩いたところで沢の水が流れてる所で休憩。コンビニ弁当の昼食。重い腰を上げトラバース道を進む。MDをとっておきのKOTOKOさんスペシャル版に取り替え、たえなる歌声に励まされながら前進する。登り気味にトラバースをつづけてゆくと、三俣蓮華の直下へはっきりとした登りとなった。ガラガラ道やハイマツの間をしのいで、稜線に出た。右折して三俣山荘へのコースをとる。30分ほど岩のゴロゴロした山道を下り、ようやく今日の目的地、三俣山荘が見えてきた。眼前の鷲羽岳が大きい。右側は相変わらず槍穂高の絶景。三時前、小屋に到達。疲労か高山病か、頭が痛い。不調なので小屋の夕食を食べきるのに30分もかかった。シチューのなかのジャガイモがやけに大きく見えた。
540三俣山荘−650鷲羽岳700−752ワリモ北分岐−830水晶小屋850−925黒岳929−1000水晶小屋1010−1035ワリモ北分岐−1126黒部源流−1205三俣山荘1235−1340黒部乗越−1454黒部五郎小舎〈泊)
頭痛はクスリで抑えこんだが喉の痛みは激しくなるばかり。今日一日「すれ違い時のこんにちは」は自粛であろう。会釈で対応することにする。5時40分、鷲羽へアタックに出る。すぐに急斜面の登りだが、適度にジグザグが入れてあるので助かった。1時間強登って、鷲羽池を瞥見してしばらくすると、鷲羽岳に到達した。登頂のポーズ、決めっ!展望は抜群。北側はワリモ岳が雄々しく聳え、その奥に黒岳が控える。東側は引き続き槍穂高の絶景。南は三俣蓮華がデンと立ち、その右側には黒部五郎がその大カールを見せている。西側は薬師がこれまた大きい。
先が長いので頂上をあとにし、北斜面の下りを20分ほどしのいでからワリモ岳へ登り返し。これがかなりきつかった。ちょっと岩が出て歩きにくい。ワリモ岳ピークの左を巻き、なお下り気味に北へ進むと、祖父岳からの道を分けるワリモ北分岐に出た。赤岳方面へさらに北へ進む。鷲羽岳がだんだん遠ざかり、黒岳がだんだん近づいてきた。尾根の西側をトラバース気味に歩き、そのあと少しザレ気味のゆるい登りが続く。黒岳からの尾根までたどりつくと、小さい水晶小屋の前に出た。裏銀座縦走路の山々と黒岳、黒部湖を見ながらコロッケサンドとメロンパンを水で流しこむ。
荷物を置いて、黒岳をめざす。やはり空身は気持ちが良い。最初は稜線漫歩で鼻歌でも歌いたくなるなだらかな道が続くが、黒岳直下になると岩がかったすこし険しい登りとなった。白ペンキのコースサインに従い、岩の斜面をトラバースしたり上がったりしてゆく。黒岳のピークがだんだん近くなって、岩の城砦を上がって行って、小屋から35分、北アルプス最深部のピーク黒岳にたどりついた。登頂のポーズ決めっ!見える山々は鷲羽岳のときとほぼ同じだが、位置関係が違うのでまた別のよさがある。真砂岳方面があんがい険しい。
わずか4分の滞留で折り返す。岩稜帯のくだりをしのいで、ツアー客の大パーティーとのすれ違いで体を休め、もとの稜線漫歩にもどって、水晶小屋に戻った。さきほどのツアー客のザックが50個くらい小屋脇に置かれていた。ざっくを回収し、百名山を75座登ったぞフフフフフとニヤつきながらザレたゆるい下りをこなし、やがて道がトラバース状となって先ほどのワリモ北分岐に戻る。ここから三俣山荘までは、ワリモ岳鷲羽岳を登り返すのはつらいので、黒部源流のコースをとる。10分ほど斜面を下り、祖父岳との鞍部、岩苔乗越に着いた。ここから南へ歩き、斜面の流れがだんだん沢らしくなってくる。
40分ばかり沢沿いの道を下って行き、黒部源流に出た。ここで道は登りに転じる。枝沢をだんだんつめていく。左を見れば突き上げる鷲羽岳が大きい。しんどい登り返しを40分ほどこらえ、正午過ぎに昨日通った三俣山荘のテント場に出た。小屋に戻り、ポカリスエット(400円)を飲んで一息つく。そのあと小屋の弁当の昼食。ごはんにサンマのカバヤキらしきものと、豆、漬け物が少し。三十分ほど休んで、小屋前の水場で水を補給してからあとニ時間、今日の宿泊地、黒部五郎小舎へと歩きにかかる。
最初は少ししんどい登りが続く。三俣蓮華岳の南面をじりじり高度を上げて行く。やがて雪渓を横切り、山腹のトラバース道となる。雲ノ平の小屋が見える。細い流れを横切って、また稜線へ斜めにのぼっていって、黒部乗越に到着。コースタイム一時間のところを5分オーバーした。さすがに疲れが出てきたか。小さいピークをいくつか越えて、稜線どおしにゆるい下り、そのあと急降下となる。眼前の黒部五郎岳とそのカールがだんだん大きくなって、やがて低木帯にはいり、きつい下りが続く。午後2時過ぎ、気温が上がり少し気分が悪くなったので、道端に坐り水をガブガブ飲む。そのあと気を取りなおし、フラフラと下りを続ける。眼下に小屋が見えてからも長かった。
午後三時少し前、黒部五郎小舎に到着。ポカリ〈350円)で水分補給しても気分が悪い。熱射病かと思ったが、体が熱っぽいし悪寒がする。これは間違いなく風邪だ。これまで私は100回以上山行をしたが、風邪を押してというのは経験がない。よりによってこんな北アの奥地で・・・・とりあえず頭痛薬兼解熱剤を飲んでおく。五時からの夕食は天ぷらが出た。他にソバの小鉢などもあり、小屋食はここのがいちばんうまかった。夜中に2回目を覚ましてトイレに行ったが良く眠れ、汗をかいたので朝には熱はとりあえず引いたし、朝食もびしっと食べられたのでたぶん大丈夫だろう。
450黒部五郎小舎−650五郎の肩−700黒部五郎岳−710五郎の肩720−826中俣乗越845−930赤木岳−1007北の俣岳−1130太郎平小屋(泊)
五時前に行動開始。最初はカールの下の方をゆっくりと高度をあげてゆく。朝イチなので懸念したほどペースは悪くない。1時間ほどあるくとカールの中を稜線めがけじりじりと登る気分のいい道となった。小さな流れを横切る。同じような道が続いて単調に感じたので、KOTOKOさんを聴きながら登る。ほどなくカール斜面に突き当たり、斜面をジグザグに登って行くきつい道となった。一歩一歩着実に上がって行って、行動開始から二時間後、稜線に出て、黒部五郎の肩に到着。ザックを置いて頂上をめざす。十分ばかりガラガラの斜面を登って、七時ジャスト、黒部五郎岳の頂上に達した。登頂のポーズ、決めっ!
展望のすばらしさは繰り返しになるので細かく記さないが、眼下のカールの眺めは圧巻であった。日本にもこういう展望があるのか、そう思った。カールのすみっこに今朝出た黒部五郎小舎が小さく見える。肩までもどり、水を飲んで一休み。きょうの行程の白眉はここからの西銀座ダイヤモンドコースである。大斜面を一気に下り、三十分ほどで鞍部に出て、小さいピークを3つほど越えて中俣乗越に到着。ここでピザパンとコーヒー蒸しパンの行動食。
黒部五郎を登る場合、登った後の脱出路も考えねばならない。黒部五郎小舎ベースでピストンしてもそのあと三俣蓮華を登り返さねばならないので、多少距離が長くても西銀座コースの方が楽だと考えて計画を立てた。若干の登り返しをこらえ、大きい岩のゴロゴロしたロックガーデンの道を過ぎて、赤木岳の標示を通過。そのあと眼前のピークへなだらかな上り坂をゆき、わりあいあっさりと北ノ俣岳の頂上を通過。遠くには太郎平の小屋も見える。休まずどんどん前進。黒岳や鷲羽岳がだんだん小さくなり、薬師岳がその威容を見せ始めた。
KOTOKOさんを聴きながら、奥黒部の稜線をガンガン下る。神岡新道の分岐を分けて木道混じりの道を快調に下る。MD1枚聴きおわる頃、くだりが一段落ついて、太郎平のエリアに入り、太郎山のわずかの登り返しをゆく。木道のくだりをしのいで、目の前に太郎平小屋が見えた。小屋前のベンチに坐りこむ。目の前には薬師岳が凛々しく立っているが、この体調では厳しいと判断し、折立までの下りコースタイム三時間、きょうやるかここに泊まって明日の朝にやるか迷った。昼食でも食いながら考える事にして、太郎平小屋でラーメン(600円)を注文。
このラーメンがうまかった。下界並みの値段で下界以上にスープが美味い。小生の身体から汗で塩分が抜けていたからかもしれないがうまかった。さてどうするか、ツイストペプシ(300円)を飲みながら思案に暮れていると急に具合が悪くなってきた。昨日とはくらべものにならない悪寒が襲う。これはヤバイと考え、きょうはここに泊まろうと判断し、太郎平小屋に宿泊手続きをする。宿帳を書く手も震える。「えーと、今村さま・・・ですね」、今野ですよと訂正する気も起こらない。部屋に案内されるとき、小屋の従業員が小生の異変を察知して、医務室に連れて行かれ、夏山診療所のやっかいになってしまう。体温は37度7分。問診の後、これを飲んで寝ろと解熱剤と抗生物質とうがい薬(1000円)を渡される。部屋に戻って寝ていると、山岳警備隊の人が血中酸素濃度を測りに来た。「ちょっと低いですね、水分を多くとって休んでください」と言われる。ああ恥ずかしい。
薬を飲んで二時間ほど横になってようやく落ちつき、売店でカロリーメイト(200円)とリポビタンD(300円)を買っておやつ。体調の悪いときはリポDに限る。休憩室の蔵書を読み漁り、5時からの夕食。おかずは豚の角煮など、種類は多いが格別なのもない。なめこの味噌汁はおいしかった。この日の太郎平山荘は中学生の団体がきており盛況で、2つの布団を3人で共用するパターンだったが薬の効果か、そこそこ眠れた。
535太郎平小屋−645三角点650−740折立810=915有峰口923・・・1010富山1033・・・1227越後湯沢1236・・・大宮1330・・・立川1500・・・1520大塚
体調は昨日の朝と同じぐらいであまり良くないが、さっさと折立へくだる。5時35分、小屋をあとにして木道の下り、そのあと木の枠で仕切られた道をドスドス下る。短期決戦のつもりなのでガツガツ下る。石がゴロツくところもある道だが、整備状況は昨日までとは比較にならないくらいよく、登山道脇にはベンチが点在する。一時間ほど下って三角点の休憩所。小屋の前では小雨がパラついていたが日が射してきたのでジャンパーを脱ぐ。
そのあとの樹林帯の下りは急峻であった。でもステップには不自由する所がないのでほいほいと下れた。大きいザックを背負った山岳部のパーティーと何組かすれちがう。すれちがう合間合間にパパパパと下りつづけ、小屋を出てから二時間少々で折立のバス停に戻りついた。苦しい歩きがやっと終わった。
8時10分発のバスで富山地鉄の有峰口へ向かう。バスは有峰湖のそばを通ってからは和田川沿いの狭い道をゆく。しばしまどろんでいるうちに有峰口の駅に到着。9時23分の電車で富山をめざす。4日ぶりに圏内になったので携帯でウエブサイトを見て過ごす。富山で駅弁を買い。10時33分の特急「はくたか7号」で越後湯沢へ向かう。駅弁を平らげ、列車は親不知海岸をトンネル混じりで抜けてゆく。姫川を渡れば糸魚川。あしたからはまたほんらいのバトルが始まる。