山紹介及びもっとも楽な登り方:
長野県北西部、新潟県との県境、大糸線と信越本線にはさまれた地帯に妙高火山群はあります。西はフォッサ・マグナ(糸魚川・静岡構造線)をはさんで北アルプスと相対する山域です。個性的な山々を数多連ねるその西端に雨飾山は位置します。どちらかというと妙高の山というよりも「大糸線沿線の山」というイメージが強いと思われる。標高2,000mに満たないが、登山コースは意外に急峻であり、やはり簡単には頂上に立たせてくれない。もっとも楽な登り方は、小谷温泉からの往復。難易度2プラス。
登山記録:2002年10月2日(水)費用発生:18,000円
050八王子・・・508信濃大町532・・・625南小谷636=710小谷温泉−800登山口822−935荒菅沢942−1050笹平分岐−1113雨飾山1140−1232荒菅沢1240−1330登山口1337−1400雨飾荘1415−1430小谷温泉1520=1600南小谷1605・・・1710信濃大町・・・1831松本・・・2042八王子
うれしい事、楽しい事の喜びがなぜ、せつなさに変わるのだろう。胸の翼は95%黒く染まり今、遥かな空見上げてる。抱えている案件、報告連絡相談調整交渉をせねばならない用件が蓄積しゾーと思う毎日から逃避したくて私は旅に出るのであろう。
9月24日、高妻山行きの翌日、疲れた体をおして秋葉原に行って、ここでしか手に入らないと思われるKOTOKOのCDをゲット。あとは一応私もギョーカイ人なのでマーケットリサーチ。ついでにめろんちゃんのお店もチェックしておいた。陳列棚がすべて鮮やかなライトグリーンであった。
9月29日、スーパーあずさで茅野へ出張。久々に身体を使う作業をまる一日したので腰が張った。身体を動かすと食欲が旺盛になるのか、昼食はメンチカツカレーの400g。帰りはY氏の車に便乗させて頂いて助かった。家で食後ぼんやりとスポーツうるぐすを見ているうちに意識が飛んで、気がついたら翌朝だった。
9月30日、飯田橋で取引先と打ち合わせ。体がだるく、うまい取引先の食堂での昼食もきつねうどんで済ます。夕刻八王子に戻り、会社がはねたあと、会社員として4年半もった自分へのごほうびに、八王子某所の和食レストランへ一人で飲みに行って、ほうとうを食べつつ、赤ワインのハーフボトルを空けた。
泥酔状態で家に戻り、布団に突っ伏す。酒を飲むとちょっとはハイな気分になれるのだが、悲しい気持ちをかき消せるものではない。でも、日々の生活が大変だ大変だ、それでもガンバンなきゃというスタンスよりは、最近は「泣いて飲んで笑って食べて、その日その日を丸め込んでいきましょう」というずる賢い考えになりつつある。いいか悪いかは別にして。生きる事、それは日々の労働。生きる事、それは野沢菜ウォッカ。生きる事、それはレストロ・アルモニコ。生きる事、それはフィアッセ・クリステラ。生きる事、それはヤマミックス。
そして次の日、昼過ぎに目が覚める。台風21号が接近中なので山には行けない。夕方には台風が上陸し、テレビのニュースが台風情報一色になる。その台風のスペックを見てふと思った。960ヘクトパスカルでめっちゃ強い台風だけど、時速65kmということは、あっという間に通りすぎて翌日は台風一過の好天になるのでは・・・・と考え、雨上がりなので雨飾山をやろうと考えついた。といっても中央線が雨で運転見合わせである旨ニュースで言っていたので気を揉んだが、22時過ぎに解除されたとの報を聞き、即座に荷物をまとめ私は旅に出た。
深夜の八王子駅、0時14分の大月行きをやりすごしても次に入ってくるはずの急行アルプス信濃大町行きの表示が出ない。ダイヤの乱れで運休かと焦ったが、駅係員に問い合わせ30分ほどの遅れがでているとの由を知り、安堵する。急行アルプスは特急あずさの間合い運用(昼間あずさで走った車両をそのまま夜はアルプスに使っている)なので、折り返し元の列車が遅れたのでアルプスも遅れたのであろう。もっとも急行アルプスはスジを寝かせて走っているから(本気で走ると早く着きすぎるので、わざとゆっくり走っている)30分の遅れは翌朝には取り戻してくれるだろう。実際にもそのとおりであった。
台風の影響もあって、急行アルプスは気の毒なくらいガラガラであった。12月1日のダイヤ改正でこの定期の下り「アルプス」は廃止が決まっている。もっとも夏の登山シーズンは座れないほどの盛況だから臨時夜行を出して対応すると思われるのだが。ガラガラなのでよく眠れ、気がついたら松本であった。「ちくま」からの乗換え客もすくなく1車両に1〜2人程度の客をのせたアルプスは大糸線に進入し、豊科・穂高に停車し、ほどなく終点の信濃大町。ここで快速の南小谷行きに乗りかえる。
大糸線は私の好きな路線である。信濃大町までは安曇野、南小谷まではアルプスの麓の高原地帯、南小谷からは姫川の崖っぷちを走る変化に富んだ路線である。まずは仁科三湖が左窓にあらわれホウと息を呑む。そのあと簗場に停車、峠を越えて姫川水系に入り神城に停車、西の方向に五竜遠見のテレキャビンの軌道が見える。そのあと白馬に停車。信濃森上からは姫川ぞいとなり、白馬大池を過ぎて千国を通過、ほどなく終点の南小谷に到着。山峡の小駅だが電化区間はここまでということもあり、JR東日本と西日本の境界駅のひとつである。
駅前にはすでに小谷温泉行きのバスが停まっていた。それに乗りこみすぐ発車。車内は私を含め二人だけであった。バスは国道148号を走った後、中土から右に折れて、小谷温泉へ向けて上がって行く。スノーシェードをいくつもくぐり、工事で片側交互通行個所を通ったあと、ヘアピンを切って7時過ぎに、小谷温泉の旅館の前に出た。
まずは登山口まで一時間強の林道歩き。雪崩覆いの工事個所を過ぎ、カーブを二つ三つ上がっていって高度1000を超えると雨飾荘。露天風呂を過ぎると、笹が峰方面の道をわけ鎌池林道に入り、大きくカーブをきりつつ徐々に高度を上げて行く。読み通りの晴天なので暑さを覚える。ほどなく鎌池との分岐に出たので右折すると駐車場が現れ、次いで小谷温泉休憩舎の建物が見えた。ここで弁当の朝食。そのあとTシャツ1枚の夏山スタイルで雨飾山への登りにかかる。
まずはすこしばかり下って大海川の河原を歩く。支流を渡ったのち、木道のようなコースを歩き行く。ほどなく道は山腹の取りつきとなった。けっこう急な登りで気が抜けない。しかも昨日の雨でどろどろの個所がいくつかあって始末が悪い。木の根と岩の間のスペースに足を慎重に置いて、斜面をこらえながらのぼって行く。もっとも登山口の高度は1150mだったので、頂上まで単純計算で高度差800m稼げばいいので、なんとかなりそうではある。さらに云えば、登山口が1150で頂上が1963なので、「鎌倉幕府をつくって倒して、室町幕府を作って、応仁の乱から戦国時代になって、江戸幕府を作って倒せば」もう頂上ちかくであるので、頭の中で日本史の連想ゲームでもしておればよい。
このコースは頂上までの間に、歩行距離400mごとに1番から11番までのナンバープレートがふってあるが、抜けている所もあるのであまり頼りにならない。日本史の考え事をしている間に鎌倉幕府が倒れ高度1350を越えた。まだまだ急峻な登りが続く。標高1500を越すと道が山腹を巻くようになって、そのあといったん荒菅沢へむけてがくんと下る。木の階段が崩落しており歩きづらい。せっかく稼いだ高度を60mくらい下げて、荒菅沢をわたる。懸念していた増水はなかった。ここで7分休憩を入れる。左を望めば布団菱の岩峰がアルプスのような威容を見せている。
そのあとも結構な急登が延々続き、いささかうんざりしてくる。しかし登るにつれて樹林帯から低木帯になり、あたりの展望がよくなってきて、雨飾山頂上部、金山や焼山が見えてきた。展望をたのしみながら高度を上げて行くと、標高1700ころから稜線に出て、白い岩のゴロツイタ上を歩いたり急峻な個所を木のハシゴで登っていったりといった高度をバシバシ上げて行く道となる。辛抱してようやく県境の尾根に出て、道はゆるやかな高原上の歩きとなる。
ちょっと下って笹平の鞍部。ここが雨飾温泉ルートの分岐。なおも進むと、池のそばから急峻な最後の登りが始まる。意を決して急登を耐える。もっとも覚悟したほどではなく、意外にあっさり頂上部に出た。雨飾山は双耳峰だが、北峰と南峰のあいだはさほど離れていない。まず北峰の石仏にタッチし、南峰の標柱にタッチした。登頂のポーズ、決めっ!急登をかさねてけっこう苦労したものの4時間強でたどり着く事が出来た。雲がすこし出ていたため、北アルプス方面の展望はあまりなかったが、東側は金山がデンとその姿をさらし、奥には焼山が荒涼とした佇まいを見せている。その奥には一昨年登った火打山も見える。南は1週間前に登った高妻山、そのとなりに見える形のよい山は黒姫であろうか。北側は姫川が流れ、その先に糸魚川の街と日本海が見える。眼下の笹平の眺めも色付き始めており錦秋の片鱗を見せている。
平日だが百名山のピークなので数組の登山者が頂上にはいた。おにぎりの昼食の後、11時40分ごろ頂上をあとにした。急な下りをしのいで、笹平のゆるやかな稜線を歩いた後、急な下りを淡々と足を踏み外さぬようこなして行く。木の階段をいくつか過ぎて、山腹のつづら折りの下りとなり、樹林帯に入って沢の音が出てきて、あっさりと荒菅沢。ここでひと休みし、このあとの登り返しを耐える。トラバース道をゆっくりと歩き、またも急峻な下り。ドロドロにはまって靴が泥まみれになる。木の根の張り出す下りはとくに慎重に下って行き、高度計の数値も順調に減っていって、ほどなく河原におりついた。ここまでくれば安全圏である。
沢沿いを歩き、登山口までのゆるい登り坂をしのいで、登山口の休憩舎着。自販機のジュースを飲みつつ林道を下っていき、往路では見つけられなかった雨飾荘への近道コースを歩き、雨飾荘近くの露天風呂で一浴。上を見上げればブナなどの木々。こういう森の中の露天風呂も風流である。さて、着替えたあと小谷温泉へ向かい林道を下り、14時半にバス停にもどりついた。
15時20分の南小谷行きのバスの車内で一眠りし、大糸線の電車の中でも信濃大町での乗換えをはさんで眠りこけ、気がついたら松本であった。あわただしく18時31分発の「スーパーあずさ14号」で帰京した。
百名山半分踏破まで、あとひとつ。