YAMAMIX CLIMAX 2000

31 北岳 3192m (trial mix)

2000年7月20日(木) 費用発生:25,000円(間ノ岳分含む)

029八王子・・・208甲府300=広河原500−白根お池分岐530−大樺沢二俣650−910八本歯のコルー930トラバース分岐ー950吊尾根分岐ー1025北岳1050−1200北岳山荘(泊)

世の中はデジタルネットワークに支配され、いわゆる能力主義が氾濫し、刹那的な気分で殺伐とした環境の中周囲の評価を気にしながら日々机に向かっている昨今は時々プチンと切れそうになる。まわりは自分よりキャリアのある人ばかりで自分が一番下っ端で悪鬼羅刹に罵倒される立場。折衝力も行動力も具現化力も、素直さも実績も人脈も、仕事に対する真摯さも、何もかも欠けており自分は今まですごく狭い世界の中で商人の真似事をしていただけなのか、と日々自問自答する日々が続く。7月下旬に取れた2連休、この先何が起こるか分からぬ、将来きっと社会的にカタストロフィーが訪れるかという予感に怯えていまのうちに最高の思い出を作っておこうと考えたのか、いきなり、

水曜日の深夜0時、大きい荷物を背負った小生は夜の八王子を駅に向かい歩き、0時29分発の急行「アルプス」に乗った。旗日前の夜行なので車内は登山客で超満員になっており、小生はデッキに立ったまま甲府まで旅する破目になった。小仏トンネルを抜け、桂川の谷を過ぎ、いくつかのトンネルを経て猿橋で国道20号の下をくぐりすこし右にカーブしつつ大月市街に入り、大月到着。当方は直立しつつ少年マガジンなど読むしかない。ほどなく大月を発車した列車は登りにかかり初狩笹子を通過すると長い笹子トンネルに入る。トンネルの蛍光灯が過ぎて行く。なんか疲れたなあ、どこか・・・旅に出ようかな・・・と思った旅の始まりが立ちんぼとは先が思いやられる。車掌が検札にやってきた。のろい夜行で座れないのに急行料金を徴収するとは。

笹子トンネルを抜けたあと列車は右にカーブし甲府盆地のふちを塩山市街に向けて下り、塩山に停車。そこからは果樹園の中を走り、山梨市に停車したあとすぐに笛吹川を渡り、石和温泉に停車し、酒折を通過し小生が少年マガジンを熟読し終わるころ甲府駅の構内に入り、速度を落とし、ゆるりとホームにすべりこんだ。かなりの客が下車する。バス待ちの荷物を置いたあと、駅前の吉野家に入り牛丼の大盛りと味噌汁の夜食。緊張感からか普段は手をつけない紅生姜を丼の上に乗せて、パリパリとかみしめる。

広河原行きのバスは4台立てであり、小生は2台目に座ることが出来た。山梨交通のボロバスは甲府市街を抜けて竜王立体交差点の下をくぐり甲府盆地を西へ進む。しばしまどろむうちにバスは夜叉神登山口に停車し数人の客が下車した。夜叉神トンネルをくぐってからは山中のカーブの連続である。トンネルを3つほど過ぎ、トラスの橋を渡ってからアカヌケトンネルに入り、抜けてしばらくすると左に曲り、広河原のアルペンプラザに到着。終点の手前だが登山者はここで降りた方が良い。ジュースを飲み登山届を書いてから午前5時、レッツゴー。

野呂川を吊橋で渡り広河原山荘の脇からいきなり登山道に入る。ふつうの登りを少し行くと沢沿いの道となりほどなく白根お池分岐。今回はすこしでも早く頂上に立ちたいので大樺沢コースである。沢沿いのしんどい登りだが支流が登山道を横切っていたり沢のふちを桟道で通ったりと、なかなかおもしろい道ではある。ほどなく沢を渡り、崩壊地を過ぎると沢右岸の高巻き迂回道。迂回道をひとしきり登るといったん谷に下り、沢を角材でできた橋で渡る。そこからも沢沿いのやや急峻な道が続き、結構苦しく感じる。標高2000mを過ぎ、樹林帯を抜けたので直射日光が顔を射す。ほどなく大樺沢二俣の分岐。なおも雪渓沿いを八本歯めがけて登りつづける。標高2200mをすぎたところで朝食にする。おにぎり3個とお茶500ml。今回は水分を2L持ってきたが早くも4分の1を消費した。

登りつづけるたびに道の傾斜は増し、当方は顔を歪めつつ登りに耐える。標高2400mを過ぎるとバットレス方面から小沢が落ちてくる。沢水をボトルに詰めさらに登りつづける。雪渓が尽き、谷が狭まり、標高2600m付近で沢を離れ八本歯のコルへの取りつき。この道は急登りと木のハシゴを連ね、厳しさは筆舌に尽くしがたい。登りがサディスチックである。職場の先達に叱責恫喝査問されるのとどちらが厳しいだろうかなどと考える。木のハシゴを一段登るごとに心臓に負荷がかかってゆき寿命が縮まって行く気がする。

青息吐息で八本歯のコル到着。対面の八本歯の頭が雄々しい。遠望はガスのため利かない。ここからも心臓が砕かれるかのごときハシゴの連続。そして露岩帯の急登、ゼエゼエ云いながらトラバース道を左に分け、今度はザレた砂礫斜面のジグザグ道、案外あっさり標高3100mの吊尾根分岐にたどり着く。ここから稜線上を北岳へ最後の登りである。最後の尾根道は傾斜は普通の山レベルであるが、なにぶん高所なので息が乱れることこのうえない。

険しい形相で登りつづける。大樺沢方面はガスがかかって何も見えないが、仙丈岳及び派生する仙塩尾根が見える。ところどころにシナノキンバイが咲いている。かかる浮世離れした斜面を登りつづけていくうちに、登りの終わりが見えた。日本第二の高峰、北岳の頂上である。やれやれ。眺望はガスのためあまり利かず,仙丈岳が確認できるのみ、稜線の南側に目をやればスカイラインが中白根へと続いている。広河原を出てから5時間半が経過していた。登頂のポーズ、決めっ!

   kitadake3.gif (32420 バイト) 北岳頂上にて、登頂のポーズ

さて、次の目標の間ノ岳に登る為、まずは稜線上の北岳山荘をめざす。下り道だが、3000m級の稜線なので油断できない。高山植物や稜線の展望に目をやりながら、落ち着いて下った。吊尾根分岐を過ぎてからも稜線の下りは続き、小さなコブを巻いたり越えたりしているうちに、北岳山荘の屋根が見えた。あとは小屋をめがけハイマツの斜面を下って行くのみである。

時刻はちょうど正午、間ノ岳往復はコースタイム三時間。今日中にやるかやるまいか思案していると空からバババババと大粒の雨が落ちてきた。これでは本日の行程これにて終了であろう。北岳山荘にて宿泊の手続きをする。2食付きで7200円。夕食券と朝食券と水券を渡される。早く到着したせいか、私は第一陣で、夕食は16時半から、朝食は4時半からのシフトであった。宿泊控えに指定されたスペースは「間ノ岳 G4」であり、なんと寝床は2階の「間ノ岳の間」の天井裏であった。ハシゴを使って寝床に登る。

しばしまどろんで、四時半からの夕食である。夕食の膳はごくふつうの昼定食のようなもので、ごはん、キャベツの味噌汁、少量の焼肉、キャベツの千切りと大根の煮物、漬物およびオレンジであった。高地なので美味いとは思えず、お茶だけがおいしいと思った。夕食後、翌朝の混雑を回避するためトイレに入る。水洗便所ではあったがペーパーは流せずゴミ箱に入れるため臭気は他の小屋のトイレと同じであった。高地なので頭が痛くなるかも知れぬと思い、寝る前に頭痛薬を飲む。眠気をもよおす効果もあるので一石二鳥である。小屋は祝日と言うこともあり超満員であったが暗い天井裏に横になったせいもあってそこそこ眠れた。

山小屋の朝は早い。午前四時には多数の登山者が起きだし支度をはじめる。小生もきょうじゅうに間ノ岳を往復してその足で広河原に降りねばならぬ。朝食のメニューはやはり和食で、ごはん、味噌汁、鯖の塩焼き及び野菜少々であった。飯を食い終わり茶を飲み干し、靴をはいていよいよ間ノ岳に挑む。荷物は小屋に置き、空身で歩きはじめる。

32.間ノ岳 3189m

2000年7月21日(金)

445北岳山荘ー515中白峰ー600間ノ岳615−655中白峰ー715北岳山荘730ー805トラバース分岐ー830八本歯のコルー945大樺沢二俣1010−1130白根お池分岐ー1150広河原1310=1442甲府1450・・・1632高尾

さて、稜線をあるきだすとほどなく中白峰へののぼりにかかる。眼前の中白峰に取り付き、苦しいが一歩一歩前進を続ける。荷物を全く背負っていないので楽なことは楽だが、高所と言うこともあってそうとう苦しい。吊尾根の端から朝日が昇り、稜線を照らして行き、南アルプスならではの雲海上の大パノラマが広がる。ほどなく小広い中白峰に到着。ここからは稜線をじょじょに間ノ岳へ向かって行く。

それにしても展望は抜群。来た方に目をやればピラミッドのような山容の北岳の後ろに甲斐駒と鳳凰山が控え、吊尾根のはるかかなたに俺を忘れては困るぞとばかりに富士山が頭だけ見せている。西側は野呂川を挟んで仙丈岳と仙塩尾根、そのさらに向こうには中央アルプスの木曽駒や空木岳・・・遥か彼方には八ヶ岳や槍・穂高が雲海の上に頭を突き出している。こういう展望はアルプスでなければ見ることが出来ない。

すこし下ってから、稜線を間ノ岳に向かいたどる。稜線上のピークを二つ三つ越えたり、巻いたりしながら、間ノ岳が徐々に近くなって行く。野呂川方面へ斜面が大きく広がっている。そしていよいよ間ノ岳に取り付き、ジグザグの登りに挑む。照りつける朝日がすこし眩しい。雪田を二つ三つ散見して、なおも上り詰めると、間ノ岳の頂上にたどり着くことができた。さすがに展望は抜群。農鳥岳が荒荒しく、また塩見岳が案外近くに立っている。塩見の奥には高い山々が幾つもつらなっている。まさに神秘の世界である。

登頂のポーズ、決めっ。さて本日中に自宅に帰らねばならない。まずは今来た道を北岳山荘へもどりにかかる。大勢の登山者とすれ違いながら快調に下り、展望をたのしみながらスカイラインを歩み、中白峰へ昇り返し、そこから北岳山荘へ下る。お花畑を見ながら山荘に戻りつき、荷物を回収し、チョコレートとポカリスエットの軽食をとってから八本歯へのトラバース道を行く。しばらくは稜線の道と並行する登り道が続く。ここにきての登り返しは厳しい。しばらくすると本格的なトラバース道である。お花畑の斜面を桟道で突っ切る箇所もありなかなか面白い。振り返れば間ノ岳が大きい。すこしのぼり気味に歩くと、昨日通った分岐に着いた。そこからは岩のゴロゴロした下りを経て、長い木のハシゴを二つ越えると、八本歯のコルに戻りついた。

一憩したのち、大樺沢への急下降になる。木のハシゴの連発を耐えに耐えて下りきり、標高2600mの大樺沢上部に戻る。ここから広河原へ高度を1000m以上削っていかねばならない。対面の地蔵岳オベリスクが目線の高さにある。岩のゴロゴロした斜面を慎重に、時には大胆に下り、快調に高度を下げて行く。2400mの水場を過ぎると雪渓が出てくる。ビニール袋で尻セードを試みる。雪渓ならではの面白さではあるが少し危ないナとも思った。速度がつき過ぎると大変なことになるので、杖と足でブレーキをかける。炎暑の中、雪と戯れる。

そんなこんなで高度を下げているうちに雪渓がなくなり、大樺沢二俣にもどりついた。ここで大休止をとり、最後の2時間の下りに備える。携行食料のほとんどを食べきり、最後の下りにかかる。太陽は照り付け首や腕はかなり日焼けしてしまった。標高2000を切ると潅木帯の中にはいる。そして1900から迂回路をとり、そして沢を渡る地点で思いっきり顔を洗い汗を流す。ついでに着ているTシャツも水に浸し、軽く絞ってからひんやりとした状態で身につけ、下りを続ける。沢沿いの下りを淡々と続ける。1800、1700、1600・・・徐々に高度計の数字も落ちて行く。暑く、苦しく、体ももはや思うように動かない。

標高1600を割ってすぐに、白根お池の分岐に着く。ここまで来れば安泰であろう。なおも沢沿いの下りを続け,、斜面を下って行くと眼下に広河原山荘の建物が見えた。よっしゃ。終わった。帰れる。広河原山荘のコインシャワーを浴びてから吊橋を渡り、アルペンプラザの横に出る。甲府へはジャンボタクシーで戻った。

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