9 八ヶ岳

( stairway mix  )

1993年7月23ー24日(金ー土)

645高尾・・・932茅野1000=1046美濃戸口ー1150美濃戸ー1357行者小屋ー1530赤岳ー1635行者小屋(泊)615−745美濃戸ー835美濃戸口902=948茅野

あこがれの八ヶ岳。

今までで一番手ごわそうな山。地図を毎晩見つめては検討し、思案に暮れた山。

迷いを振りきるように高尾からいつもの中央線の列車に乗る。梅雨明けがまだなので曇りである。笹子トンネルを抜けると晴れ間がのぞいて来たが遠望はきかない。塩山からは果樹園の中を行く。地面に銀色のシートが敷いてあり、その上に桃がいくつか転がっている。竜王と日野春で特急に抜かれ、小淵沢を過ぎる。まだ八ヶ岳は見えない。諏訪盆地に入り9時32分、茅野着。

 茅野駅は意外、といっては失礼にあたるが意外に大きく駅ビルまで建っており、甲府や立川といい勝負であった。登山者の並ぶバス乗り場から、美濃戸口行きのバスを探して乗りこむ。ほどなく八ヶ岳の広大な裾野に入り、原村を過ぎるとペンションが数多く現れ、勾配を増した道をバスはうなりをあげて登り、美濃戸口に着いた。目の前にある八ヶ岳山荘の看板には、

めし 八ヶ岳

 と、大書きされていた。入口で登山届を書き、柳川沿いの林道を登り始める。今日はこの流れの源頭にある行者小屋をめざす。この流れを「落とせ」ばいいわけであるのだが先は長い。一定のリズムを保ちつつダートの林道を歩き、小松山荘を過ぎ、古びたテニスコートの横を通りほどなく美濃戸山荘に着いた。おでんとおにぎりの昼食。お茶うけの白菜の漬物がうまかった。目の前を柳川の清流が流れている。

林道と分かれ、南沢コースの登山道に入る。登りの傾斜がきつくなり、足元には大きな石がゴロついている。柳川南沢の流れをかたわらにしたり高巻いたりし、歩みを進めるにつれ川幅が狭まってくる。やがて沢の水は涸れて、石だけがゴロゴロしている広い河原のゆるい登りに変わり、展望が開けてくる。まず阿弥陀岳が現れ、赤岳天望荘が豆粒くらいの大きさで見え、赤岳が全貌をあらわにした。頂上部は鋭い岩稜である。

 河原歩きに飽きる頃、ようやく行者小屋が見えてきた。ここからの展望もすばらしい。横岳からの岩稜が阿弥陀岳まで連なっている。この眺めだけでモトが取れたと思った。林間学校らしい中学生の団体がいる。赤岳の下には文三郎道の鉄階段が続いており、まるで空中回廊のようである。よく非日常的なロールプレイングゲームなんぞにああいう道がでてくるのだが、この先あれを登るのかと思うと気が滅入る。

 本日はここまでのつもりだったがまだ午後二時だし天気も良いしさほどへばってもいないし何よりあの道を見てああいう嫌なことは先に済ませてしまえと思い、今日中に赤岳をやってしまおうと決断した。

 小屋に荷物を置き、究極の登山スタイル、空身で登る。手始めのジグザグの急坂を過ぎ、行者小屋の赤い屋根がぐんぐん低くなる。しかしここからが八ヶ岳らしい地獄である。「鉄の階段」である。そこをカン、カン、カン、と乾いた音をたてて登って行く。そして鉄の桟道をはさんでまたもすごい段数の鉄の階段。そこを登りきるとお次はクサリ場である。スリル満点の道である。展望が開け、中岳のコルが低くなり、自分の高度を実感する。

 恐ろしい道は40分ほどで終わり、上部の銃走路に入る。ザレ場のしんどい登りを経て高度感のある岩の城砦の中をクサリとハシゴを頼りに登る。そして東側の展望も開け、野辺山あたりの高原農場が見えた。相当手ごわい登りのラストを耐え、最後の短いハシゴを登り、ようやっと2899m、赤岳南峰頂上に立つ。改築中の赤岳頂上小屋の上をヘリが舞っている。展望を楽しもうという気持ちより早々とずらかろうという気持ちの方が強かったので、逃げるように頂上を後にする。

 痛い。岩稜の下りで足のホールドに失敗し膝をしたたかに岩にぶつけてしまう。どうにか岩とクサリの難所を過ぎ、足の置き場に困るザレ場の下りを終え、文三郎道の戻りにかかる。鎖場を慎重に過ぎ、足のすくむ鉄階段の下りにかかる。気を紛らすために段数を数えてみたら二つ目の一番長いやつが93段、その次が88段であった。ジグザグの坂を下り行者小屋に戻りついた時は心底嬉しかった。

 行者小屋はログハウス調のつくりであった。宿泊を申し込むと二階の大部屋のスペースAに入れとの指示を受ける。小屋は二階建てで一階が個室と食堂とみやげ物(オリジナルワインまである)店であった。午後6時からの夕食はカレーライス、骨付きウインナー、サラダ、まあまあの味である。

 翌朝5時頃、ヒョオオオという風邪の音で目覚める。ラーメンの朝食(自炊)を済ませ、六時過ぎにくだりにかかる。ただただ、ひたすら、ずんずん下り、美濃戸山荘に出る。ここで飲んだ高原牛乳はおいしかった。そして最後の林道の下り道を行く。小雨がぱらついてきたものの本降りになる前に、「めし 八ヶ岳」看板のある美濃戸口バス停に着いた。

 バスは八ヶ岳の広い裾野を下りゆく。つらさばかりが思い出に残り、頂上の印象ははっきりしない。車窓から振り返ると八ヶ岳は見えなかったが、富士山に良く似た蓼科山が良く見えた。

10・11 霧ケ峰・美ヶ原へ

登山記録に戻る

ホームに戻る