61 安達太良山 1709m

山紹介及び最も楽な登り方:

高村光太郎の「智恵子抄」でも出てきた、「本当の空」のある山であり、東北本線の車窓から見られる福島県の雄峰です。猪苗代湖を配した磐梯山の秀麗な佇まいや吾妻山の茫洋さのような強烈な個性はないものの、登ってみるとこの山は標高以上に雄大で、荘厳である。とくに稜線からの沼の平の眺めは圧巻。最も楽な登り方は、奥岳(バスは夏休み中は毎日、春や秋は土曜休日のみ)からゴンドラリフトで薬師岳へ上がって、安達太良山から鉄山へ稜線を辿るコース。難易度2。

登山記録: 2003年10月4日(土) 行動時間4時間46分 費用発生:15,410円

450聖蹟桜ヶ丘・・・454分倍河原・・・501府中本町・・・南浦和・・・555大宮630・・・726郡山735・・・801二本松810=855奥岳−1010くろがね小屋−1120鉄山−1150安達太良山1200−1250薬師岳−1341奥岳1400=1420岳温泉1440=1510二本松1528・・・郡山1619・・・1945新宿2000・・・・2025聖蹟桜ヶ丘

青森県の2座を踏破して、この調子なら年内に65座くらいまで行けるのではと感じていたが、青森行きの翌日から以前虫歯の治療を行った奥歯が突然痛み出し、週1回の歯医者通いを余儀なくされて、休日の半分はこれに費やしてしまうこととなった。また本業の仕事が忙しくなり、残る休日の半分近くがつぶれてしまい、九月中旬、下旬の青い空をみて、こんな時に山に行けないのかと悔しい思いをした。だが、山に行かないと当方は精神状態が危うくなるので、緊急性の高い仕事が一段落ついた十月上旬、土曜日に代休を取って、旅に出ることにした。土曜日なので二本松からのバスの運転される安達太良山をやろうと考え、前夜にプランを練った。

朝四時、山に行かねばという思いと睡魔がせめぎあう中、かろうじて前者の意思が優先され、布団から出てザックを背負い、夜明け前の野猿街道を自転車で桜ヶ丘に向かう。京王線の始発に乗り、分倍河原・府中本町の慌しい乗換えを経て、武蔵野線の車内で一眠りし、南浦和から京浜東北で大宮に出た。二本松までの乗車券と新幹線特急券を買った後、大宮駅構内のベッカーズでベーコンエッグセットの朝食。マグカップに注がれた朝のブラックコーヒーがうまい。

6時30分発の「やまびこ41号」で郡山を目指す。新幹線は朝の関東平野を疾走し、たちまち小山を通過、日光連山が見えてきて宇都宮に停車。さらに北へ進み、那須高原の丘陵地帯をトンネルに出たり入ったりしながら走る。ここで眠って郡山を過ぎるわけにはいかないので、スポーツ紙をじっと読みながら待つ。白河の街、須賀川の街を抜けて、ほどなく郡山着7時26分。在来線ホームに降りて元急行型電車6両編成の福島行きに乗りかえる。

二本松には8時過ぎに到着。きょうはお祭りがある関係上駅前までバスが入らないので二本松郵便局まで歩き、そこから奥岳行きのバスに乗った。車内は登山客でほぼ満員であった。バスは安達太良山の麓に入り、すこし高度をあげて岳温泉。ここからも何人かの客が乗る。そこからは温泉街を抜けて、奥岳目指して高度をグイグイ上げて、目の前に大駐車場が現れ、8時50分頃奥岳に到着。駐車場の一隅には何台もの大型観光バスが停まっており、ツアー客の大群がゴンドラリフトのほうへゾロゾロと歩いて行く。

体調によってはゴンドラリフトに乗ろうかなとも考えていたが、吾妻山にしろ前回の岩木山にしろ文明の利器に頼りっぱなしで多少気が咎めたので、今回はまじめに歩くことにして、くろがね小屋方面の林道を進む。現在の高度は900、頂上の1700まで800稼げば良いので適度な数字ではある。6月の吾妻山行きのときこのエリアの地図を紛失してしまったので今回は地図なしでの歩きである。そのせいで勢至平までつづら折りの林道を馬鹿正直に歩き、ショートカットできる登山道を歩けず多少遠回りした。

勢至平をいつのまにか通り過ぎ、傾斜がだんだんゆるくなって淡々と歩いて行くと、目の前の山肌は赤や黄色に染まっているようになった。いちおう紅葉の見頃のようである。林道のドン詰まりからいったん谷へすこし下って前進すると、目の前にくろがね小屋の建物が見えた。10時過ぎにくろがね小屋の前に到着。悪い事に小雨が時折ぱらつくはっきりしない天気である。馬の背へ直接登る道は有毒ガスのため通行止めで、矢筈森の左側を巻いて稜線へ向かう。まずは小屋の横から始まる急な登りである。

高度を1400まで稼いだところで日が射してきたので、風のあまり吹きこまない岩陰を見つけて休憩。甘いパン4つをジャワティで流しこんで、体が冷えないうちに歩きを再開する。低木帯の紅葉に見とれながら淡々と歩き、四方から道が合わさる矢筈森の分岐に出る。右折して矢筈森の西側を巻きながら高度を上げて行く。稜線に近づくにつれ風が強くなってきて体が冷える。

あっさり稜線に出て、まずは標高の高い鉄山から登ることにして北へ進み、鞍部まで下る。左側は沼の平が凄愴な様相。草木ひとつない死の世界がその部分だけ広がっている。鞍部の下りでは滑りやすい箇所もあって、風も強くちょっと苦戦した。腰を少し落として、風と相撲をとるようにして前進する。くだりきったところから尾根を少し進み、鉄山の急登にとりつく。数分の登りで上部まで達し、ケルンと三角点があるだけの鉄山頂上を踏んで、今度は安達太良山めがけて元来た道を引き返す。

鉄山を下り、左にくろがね小屋、右に沼の平を見て稜線を進み登り返しを堪え、先ほどの分岐まで戻って、さらに安達太良山へ稜線をたどる。鉄山より安達太良山の方が当然メジャーで、ここからは歩く人が格段に多くなる。強風にあおられながら前進し、稜線の展望を楽しむ。磐梯山が右手に見えたので写真を撮ろうとしたが強風でバランスを崩しよろめく。いかんなと思いながら前へ進むと前方に小突起が見えた。これが安達太良山で、その突起が乳首を思わせることから、乳首山とも呼ばれている。

ひと登りして「安達太良山頂上」の標識の建つ小広いところに出る。大勢の登山者が弁当を広げている。本当の頂上はこの裏手の「乳首」を登った所にある。急な斜面を三点支持ベースで登り、クサリにつかまりながら登高し、あっさり乳首のてっぺんに立てた。「安達太良山頂」の標識と「八紘一宇」の石碑がある。さすがに展望は抜群で猪苗代湖や3年前に登った磐梯山、6月に登った吾妻山などが見える。

人ごみの頂上を後にして乳首を下り、薬師岳方面へ下る。ゴンドラリフトからつながっているので、こちらが安達太良山のメインルート化しており、家族連れの軽装レジャー客も多く、すれ違いにもけっこう時間を要する。高度1500を割ると道が滑りやすい赤土で一部は泥濘と化しており、気を使って下った。ほどなく補修の石が敷き詰められた道となり、そのあと木道となり、あっさりと薬師岳におりついた。ここで紅葉をながめながらおにぎりの昼食。

ゴンドラリフト利用の客とはここでルートが分かれ、ふたたび静かな道を下って行く。五葉松平を過ぎて、滑りやすい下りをしのいで、あっさりゲレンデに出た。ここからはスキー場の斜面を適当に下れば良かった。ほどなくスキー場管理の砂利道に出てそれを下っていくと行きに通った林道に出た。小雨のぱらつく森の中を少し下って、13時40分ころ奥岳のバス停にもどりついた。

帰りのバスは岳温泉乗換えだったので、待ち時間を利用して岳温泉で一風呂浴びて、そのあとニ本松までバスで下った。二本松15時28分発の黒磯行きの列車で郡山へ向かい、郡山発16時19分の臨時快速「フェアーウェイ」に乗る。車両は「ムーンライトえちご」と共通の特急型電車であった。夕刻の那須野を列車は走る。私は眠りながら新宿へ向かった。

62 恵那山へ進む

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