37 空木岳 2864m

山紹介及び最も楽な登り方:

いわゆる日本アルプスの一本である「中央アルプス」は伊那谷と木曽谷にはさまれ、広がりこそないものの南北に細長い形で構成されています。北の秀麗な木曽駒にくらべ、比較的地味な山のように見えますが、さすが日本アルプスの一員だけあって、展望やスケールは一級品。最も楽な登り方は・・・天候が良ければ駒ヶ岳ロープウェーで極楽平経由の縦走だと思います。池山尾根は単調だが、標高差2000mを稼がねばならないと思うと厳しいかもしれないです。

登山記:2000年9月6・7日(水・木) 費用発生:21,800円

019立川・・・急行アルプス・・・349辰野453・・・547駒ヶ根700=750しらび平800<<<807千畳敷810ー835極楽平ー935濁沢大峰ー1040檜尾岳ー1150熊沢岳1200ー1315東川岳ー1335木曽殿山荘(泊)

535木曽殿山荘ー640空木岳650ー735避難小屋・駒石分岐ー820迷尾根ー930池山小屋945ー1050菅の台1139=1156駒ヶ根1200=1507中央道府中

辰野で急行アルプスを降りたら思いっきり雨が降っていた。晴れの天気予報を信じていたのに。空木のような良い山は雨天決行したくない。木曽駒に4年前に登った際、その雄大にして贅沢なパノラマは山好きでなくとも絶対見ないと損である。昨年の乗鞍の雨の中強引に登って体を冷やした悪夢もあるので引き返そうかなと思うも、ひょっとしたら好転するかも知れぬと思い駒ヶ根でやるやらないのジャッジをしようと思い、1時間待って飯田線の始発に乗る。

駒ヶ根では雨が上がっていたが先ほどまで降っていたらしく路面が濡れている。待合室でバスの始発を一時間以上待たねばならない。6時半に立ち食いそばが開いたので卵そばの朝食。そして山の方を見たが白い雲に覆われている。ここで引き返しては交通費が丸々無駄になるぞという貧乏人根性が出たのか、やると決めシラビ平行きのバスに乗る。夜行明けとあって眠くてたまらない。バスは駒ケ根市街を抜け中央高速の下をくぐるとほどなく駒ヶ根高原の別荘地に入り、菅の台でマイカーからの客を乗せさらに山奥へ入る。中御所渓谷をどんどん分け入って行く。うとうとする内に標高1600mの終点、しらび平である。山々は雨雲に包まれている。ロープウェイの発券窓口で皆往復の切符を買うが小生は片道である。さて、4年ぶりに魔法の箱に乗ったがその威力たるや凄まじい。高度計の表示が滅茶苦茶な上がり方をする。あっという間に2612mの千畳敷到着。

外は微雨混じりの霧の中。観光客もどうしたものかという表情である。勇を鼓してホテル千畳敷の扉を開き、極楽平へののぼりにかかる。ここは4年前にあっというまに下ったところだが、登ってみると岩がごろついていて案外厳しい。視界はあまり良くなく、15m先は見えない。ロープの張られたハイマツ帯の斜面を登ると極楽平の分岐。東は宝剣、西は空木方面。稜線上なので案の定風がかなり強く、寒さを覚える。今回からの新装備として、八王子高倉町の某ショッピングセンターの某スポーツ専門店でザックカバーを購入した。前々回の塩見岳ツアーで全荷物ずぶ濡れ寒さに震えながら寝た事件でザックカバー購入の必要を感じたのであったが今回早くも使用とあいなった。

風がビョービョー吹き付け、引き返したくなってくる。しばらくすると道は白い砂の稜線から、斜面の急下降となり、そのあとハイマツ帯の尾根歩きから一気に鞍部めがけて下り、そこから眼前の濁沢大峰めがけて一気に登る。この辺で若干晴れ間が覗いて来たがほんの数分でもとの霧の中となる。晴れていれば絶景が広がるのに勿体無いなと思う。さて濁沢大峰からは岩場混じりの尾根伝いの歩きで1箇所だけアングル(鉄のクイ)の打たれている箇所もあって緊張する。そしてまたも伊那側に巻きつつ相当な鞍部への下り。目の前にマッチョマンの肩のような檜尾岳とマッチョマンの腕のような檜尾根が見え、それがどんどん高くなって行く。鞍部にたどり着き、そこからマッチョマンの肩めがけて猛烈な長い長いのぼりが始まる。晴れていれば展望が楽しめるのだが、今日は黙々と寒い中登らねばならないので厳しい。

マーッチョ、マーッチョ、フジヤマッチョと富士急ハイランドのCMメロディを口ずさみながらやけぎみにのぼり続ける。そこから檜尾岳までは本当に長く苦しいのぼりだった。やはり池山尾根からのぼれば良かったかなとも思う。甲斐駒黒戸尾根並みの標高差を勘案してロープウェイ利用の尾根歩きと言う手を使ったが、こうも厳しい頂上部のしのぎがあと4時間も続くのかと思うとぞっとする。ハイマツと岩と霧しか目に入らないつまらない登りに耐えて、ようやっと檜尾岳2728mにたどりつく。まだ先は長い。

檜尾岳からかるく下った後、しばらくは岩混じりの相変わらずの尾根歩き、そのあと道はゆるいのぼりから急な登りへと転じる。諦め&やけムードの当方は心に念仏でも唱えながら登る他ない。ピーク付近の急な登りも3度目なら体にこたえる。あいかわらず岩とハイマツの間を寒さに震えながら登る。岩の間を赤ペンキのコースサインが最もましなルートをしめしている。やっとの思いで熊沢岳2778m。あと一山越えねばならぬ。

熊沢岳直下に風よけになる大岩があったのでここで昼食にする。早々とおにぎり3個をポカリスエットで流し込む。著しく体力消耗したあとのポカリはひときわうまいと感じられる。そして歩きを再開し、しばらくはだらだらとしたハイマツ帯の下り、そのあとは幅の広い尾根道をくだり気味に縦走させられる。小ピークが連続しているはずなのだが霧のため何処をどう引き回されているのか見当がつかず、ただ素直に赤ペンキのコースサインにしたがって歩くのみである。ほどなく小雨が落ちてきた。メガネが雨滴で曇る。右目の視界が悪くなったということは雨は木曽谷から降ってきているのか。

ほどなく道は岩の間の容易でない急登となり、それまでの疲れもあり当方はもうフラフラのメロメロである。ここでぶっ倒れて明後日かいしゃに来れなくなったらどうなるかということが去来する。東川岳への登り返しは距離的にはそれほどでもなく、本日最後のピーク東川岳にたどりついた。そこからは木曽殿越めがけてのものすごい下り。急斜面を一目散に下って行く。だがコースタイム通り、20分しないうちに眼下に小屋の建物が見えてきた。ほどなく道は白砂のジグザグ下りとなり、土嚢積の脇を通って、木曽殿山荘にたどりついた。まだ1時半だが疲労困憊なので本日は終了である。小屋番氏に宿泊を申し込む。2食付きで7000円。そのあとお茶のサービス。疲れているせいもありとてもうまかった。

5時半からの夕食メニューは山菜ごはん、吸い物、おでんと揚げ物の大皿、漬物であった。一杯だがワインのサービスもある。睡眠薬代わりに500円のビールを1缶買い、おでんと揚げ物を食べながらグビリと飲む。あまり小生は強くないのでビールとワインでかなりいい気分になって2階に上がりそのまま横になる。そのあとは1時まで何も覚えていない。そこからはイビキの大合唱の中とぎれがちの睡眠になったが、5時過ぎに目が覚めた。朝食のメニューはごはん、味噌汁、山菜、煮豆少々、漬物及びナガイの焼海苔であった。

5時半から意を決して空木への登りに挑む。岩とハイマツの間の登り道を必死に登る。今日は晴れてはいないが高曇りなので展望がよい。ほどなく昨日歩いた宝剣岳からの稜線が見え、その後ろに御岳が見え、乗鞍までも姿を現した。だが登りはそうとう苦しい。高度計の数字だけが励みである。あと200、あと180、あと160・・・ほどなく第一ピークを越え、そこからわずかに下ったあと再度、容易でない登りが続く。岩の間につけられた道なのでホールド・ステップを繰り返し、三点支持で登ったりと、まるで岩とレスリングをするようにのぼりつめてゆく。右奥の南駒ケ岳が目線の高さになり、背後の木曽殿山荘が見えない角度になると頂上は近い。

容易でない登りは延々続き、岩の間をすり抜けたり回りこんだりよじ登ったりしていくと、十字架のような頂上の標柱が見えた。そこから大きい一枚岩の上を歩き、ようやく空木岳の頂上にたどりついた。展望はまずまず。伊那谷盆地をはさんで南アルプスもそれなりに見え、八ヶ岳連峰や浅間まで見える。西側は晴れており、恵那山や御岳、乗鞍、穂高連峰も見える。そして中央アルプスの山々の連なりも圧巻。木曽駒から南駒ヶ岳までズラリと望める。だがここまで来るのには本当に容易でなかった。はあはあ、登頂のポーズ、決めっ!

下山は池山尾根を下る。標高差およそ2000mの難儀な下りだが、他に手がない以上止むを得ない。さてザレ場をひとしきり下り、駒峰ヒュッテの前を通ってから尾根どおしのゆるい下りとなる。檜尾岳と木曽駒をながめつつの下りである。ほどなく大きな駒石にぶつかり、そこからは樹林帯への下降である。ハイマツ帯がシャクナゲ帯にかわり、ほどなく空木避難小屋からの道をあわせ、尾根道の下りにかかる。とくに難儀な箇所のない平凡な尾根の下り道であった。迷い尾根はしっかり鉄の階段と桟道で道がつけてあり通行にはなんの問題もない。

標高2100m地点で上着を脱ぎ、身軽になって下りにかかる。大地獄・小地獄は表示がなかったたため特定は出来なかったがそれらしき鉄の桟道を通った覚えがある。懸念していた登り返しはごくわずかで、あとはただだらだらと下る一方の道である。標高2000を割ると道はよりゆるやかな下りとなったので足任せにどんどん前進する。疲れてはいるがさくさく下れた。ほどなく道が駒ヶ根高原遊歩道と合流し、水場につく。そこからは公園の遊歩道レベルの下りが延々と続く。標高1600を割ると池山小屋への分岐があった。ルートから30秒ほど外れたところにあばら家同然の汚い池山小屋はあった。ここの前で一憩したのち、最後の下りへスパートをかける。歩道は山腹を大きく巻いて、タカウチバ展望台を過ぎるとターンを切りながら右に左に揺れながら下って行く。ほどなく林道に出る。たいていの山ならこれで登山道はおしまいなのであるがまだまだ続く。

ここからは再度登山道となり、階段状の下りが延々と続く。三本木地蔵の下に池山尾根で亡くなった方の遭難碑が3つあった。そこからも足任せに高度を下げて行く。林道と2回クロスし、なおも下りを続け、当方もいいかげんうんざりしてくる。高度計が1000を割った。しかしまだ終わる気配がない。そのあとどこからか「木陰のオアシス遊歩道」なる道が寄り添ってきて交叉したり、センスがないと道をまちがえる恐れのある区間に入った。また林道とクロスすると、左手に人工スキー場が見えてくる。標高900を切ると、人工スキー場の敷地を横切り、さらにひとしきり下ると車道に飛び出す。「空木岳登山口」の大看板がある。そこから左折し、車道を駒ヶ池方面に進むと、ほどなくバス道路に出た。駒ヶ根行きのバスに乗る前に菅の台の「こまくさの湯」で一風呂浴びる。

今回の帰りの足は中央高速バス。料金も安く快適で、駒ヶ根から三時間余で府中のバス停まで着いてしまい、京王線の多磨霊園駅経由で自宅には明るいうちに帰着できた。

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